|
「おフログ」はいま話題のブログ(ココログ)を利用したユーザー参加型の温泉コラムです。トラックバックやコメントお待ちしてます。(トラックバック・コメントのお約束) |
第5回:吉野斉の止まらない旅!? 尾瀬檜枝岐温泉「かぎや旅館」
隠れ家名湯・旨酒探訪 by 吉野 斉(よしのいつき)吉野斉のジェットコースター旅人ライフ
福島の大黒屋さんの近くでは初冠雪が見られたとのメールが届きました。ついに冬到来。そろそろ冬眠したい吉野斉の「いい湯・旨酒」コラム、第五回です。どうぞよろしく。
今回は私のこの夏の流れ旅を紹介することにします。
ある朝「今日は旅に出よう」と思い立ちました。思い立ったが吉日、十五分で旅に出られる身軽さが自慢の私は、早速北へ向かって出発しました。私の仕事はフリーライター。最低限、携帯とノートパソコンとネット環境さえあれば何処でも仕事はできるのです。携帯でクライアントさんと打ち合わせ、エアーエッジを使ってネットで調べ物をし、ノートパソコンで原稿を書き、e-mailで納品。これは電車でも車の中でも温泉宿でもできます。電波が入る場所なら、野宿してても仕事はできます。インターネットの恩恵恐るべし。そんなわけで私は旅に出ながら仕事もしているわけです。そこまでして旅に出るか?とたまに言われますが、放浪してるのが好きなんです。だから追わないでください(笑)。
というわけで、ある夏の日。私は北に向かいました。最初は1日で帰るつもりで栃木某所に投宿。ところが、この宿がどうも気に入らなかったのです。客がほとんどいなかったせいかロビーの電気は消えていて、なんとも寂しい。露天風呂は三カ所あるのにも関わらず、一カ所はぬるま湯。一カ所は熱すぎて入れない。かろうじて入れた露天は道路の真横で車がびゅんびゅん走る中、電線がもの悲しくゆれていました。
どうしようもなく悲しくなってしまった私は「このまま帰ってなるものか」と奮起してしまったのです。そして次の日、私は北上していました。こうなったら止まりません。次の日は福島に入り、なかなかいい宿に泊まりました。ごきげんになってさらに北上。そして素泊まり。次の日、突如三陸海岸を見たくなり、海を目指しました。ところが。思えばここが運命の分かれ目でした。走れば走るほど緑こく山深くなっていくではないですか。
「もしや…?」
そうなんです。私が向かっていたのは日本海方面。み、道間違えてるじゃないか、しかもこんなところで!!
三陸海岸も太平洋もさようなら。ここで私のロックかつジェットコースター的な性格が炸裂しました。
「よっしゃー。待ってろよ、日本海!!」
というわけで私は山の奥へ奥へと突き進むことになります。
とはいえ東北地方を横断するとなるとかなりの距離があります。日が傾いてきた頃、私はちょっと不安になりはじめました。
「この辺でどこか泊まったほうがいいかな。。。」
その時。道路標示の「檜枝岐」の文字が目に入りました。檜枝岐村といえば、確かそば料理で有名な温泉地。これは…いくしかない。
そうして私は檜枝岐村に入ったのでした。
あたたかい山村。昔がそのまま残っている場所
檜枝岐村は尾瀬の玄関口。福島側から尾瀬に入る旅人は昔から檜枝岐村に宿をとったそうです。車を降りて空気を吸うと、緑の匂い。村は時間の流れを忘れさせるような不思議な魅力を持っていました。村の真ん中を川が流れています。川沿いの道を少し歩いてみると、小さな神社が目につきました。鎮守のかみさまだ、お参りしていこう。この神社では一年に数度「村歌舞伎」が行われ、その日は毎年全国から見物客が集まるそうです。境内には歌舞伎舞台があり、本殿にあがる階段が歌舞伎見物の際にはホール状の客席に早変わりする造りになっていました。
私は以前巫女の仕事をしていたことがあります。そのせいもあり、鎮守さまが村人に愛され伝統が村に息づいていることが嬉しくなり、笑顔満開になってしまいました。

すがすがしい山里の宿・かぎや旅館
「もしかして今日は寝袋かなぁ。テントを張れる場所あるかなぁ」
と不安に思いつつ、飛び込みで宿を探すことにしました。せっかくなら、この村のあたたかさを存分に感じさせてくれるような宿がいい。そう思いながら歩いていると手作り風の「かぎや旅館」という看板を見つけました。小さな宿だけど、飾らない風情。山里らしいこじんまりとした雰囲気に惹かれ、私は中に入りました。
「あのぅ、今日、泊めてもらえますか?」
中から若旦那さんと若女将さんが顔を出し、にっこり笑って
「いいですよ」
と答えてくれました。よかったー!!
早速、私は部屋に案内してもらいました。廊下の板目がキレイです。階段を踏みしめると小さくきしむのも懐かしい音です。懐かしい。そう、古い校舎を思い出すような感覚です。夏休みに田舎のおばあちゃんの家に遊びにいった時のようなノスタルジックな感傷をおぼえました。それは多分、木のやさしさ。
建物自体は古くても、隅々まで細やかに磨かれた廊下や階段はすがすがしく、やさしい。踊り場にはあざみの花が飾ってあり、宿の方々の気配りが感じられました。
お茶をいただきながら話をきくと、ご自慢の総檜風呂があるとのこと。これは嬉しい!長距離移動で疲れた体を癒そうと、早速お風呂へ。
内湯ののれんをくぐると私は「うわぁ」とため息。内湯にふんわりとたちこめる檜の香り。本物の香りです。あまりにもいい匂いで、私は大きく深呼吸。
それから檜風呂につかってのんびり。お湯はさらさら、檜の香りに包まれて、とっても気持ちいい。湯煙の中で檜の木が生きています。ここでも感じたのは「木のやさしさ」。良いお湯にめぐりあえた幸せをかみしめながら、ゆっくり湯を楽しみました。
女将さんの作るそば料理はここだけの味!
湯を楽しんですでに上機嫌の私は、夕食をとるため食事処へ向かいました。嗚呼、いい湯旨酒。あとはお酒が飲めたらそれで満足。そう思いながら食事処に入ると、おおきな囲炉裏で岩魚があぶられています。野趣満点。興味津々で食事が運ばれてくるのを待ちました。

運ばれてきた小鉢の山菜は食べたことのない味。歯ごたえがあり、アスパラガスのような甘みもある。ミヤマイラクサという山菜だと教えてもらいました。
「今、季節なんですよ」
この初対面の山菜、本当においしいんです。
それから「自家製豆腐そばの実がけ」。とろりと甘くて上品。これも美味しい!

かぎや旅館さんのお料理は女将さんが作っていらっしゃるとのこと、珍しいものが運ばれてくるたび「これはなんですか、おいしいですねー」を連発する私に、女将さんは照れていらっしゃいました。
宿自慢の蕎麦料理は檜枝岐村でしか食べられないものもあるとか。そばを使った味噌味のすいとんのような「つめっこ」や、そば粉を練って甘く味付けした「はっとう」。

そして名物「断ちそば」。断ちそばはつなぎを使わないそば粉100%のお蕎麦。布を裁つように切ることからこの名前がついたそうです。しっかりした蕎麦の風味が味わえます。そば好きにはたまらない蕎麦づくしのお料理。日本酒党で大の蕎麦好きの私は、断ちそばをつるりとすすり、とても幸せな気分になりました。

かぎや旅館では地酒「清酒檜枝岐」と「生酒 尾瀬ごころ」が味わえます。どちらもかざらない朴訥さが魅力。「尾瀬ごころ」は生酒らしい甘さがあります。「清酒檜枝岐」はくせのない辛口。好みにあわせてお好きなほうを。

またこの宿は「日本秘湯の会」の会員宿でもあり、「秘湯の宿」限定の「秘湯ビール」も冷えています。ビールが飲めない私も物珍しいのでちょっと味見。どちらかというとピルスナー系?と感じましたが、ビールに疎い私はビールのコメントには自信がありません。限定ビールなので興味のある方はぜひお試しください。寒い季節になったので「岩魚の骨酒」もおすすめ。
突撃日本海!?
翌朝、かぎや旅館の大旦那さんといろいろ話をしました。お料理を食べていて小さな頃を思い出したこと。この宿に泊まれてとても嬉しかったこと。かぎや旅館の皆さんは全員で手を振って送り出してくださいました。本当にあたたかい気持ちになる宿でした。
笑顔満開。気分爽快。抜けるような青空に私は胸ときめいていました。
「ビバ日本海!待っててね、佐渡」
走る車。変わる景色。はやる心。もはや止まらない旅。こうなったら海を渡ろう!
そして。ついに新潟入り。あと少しで日本海。
かなり興奮しながら、日本海の見える露天風呂のある宿を探していた私の携帯が鳴りました。お仕事仲間のデザイナーさんでした。
「お疲れ様ですー、今どこですか?」
「え…えっと新潟です。。。」
「…ま、またですかっ!? で、今日の夜打ち合わせできます?」
「今日の夜ですか………
……分かりました。帰りますっ!!」
日本海への憧憬はここで崩れ去りました。
働く旅人・吉野斉。打ち合わせとなればどこからでも飛んで帰るのです。
その日の夜、私は何事もなかったかのように東京で打ち合わせに臨んだのでした。
それが今年の夏、止まらない旅路での出来事でした。
止まらない旅路で出会った「懐かしい宿」…(了)
■尾瀬檜枝岐温泉 かぎや旅館
かぎや旅館HP
@nifty温泉「檜枝岐温泉 かぎや旅館」詳細ページへ
★写真協力:かぎや旅館様
text by 吉野 斉(よしのいつき) | 2004.12.01 | [ 隠れ家名湯・旨酒探訪 ] | 固定リンク | コメント (4) | トラックバック (0)
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/47957/2121942
この記事へのトラックバック一覧です: 第5回:吉野斉の止まらない旅!? 尾瀬檜枝岐温泉「かぎや旅館」:
コメント
働く旅人・吉野斉様こんにちは。
素晴らしい行動力、見習わないといけませんね!
止まらないでこのまま突き進んで下さい(笑)
でも、いいお宿にはどんどん泊まって下さいね♪
投稿者: 森野 小熊 (Dec 9, 2004 10:55:40 PM)
我が家の母も 「介護の旅」の途中で 突然
「日本海に行く」と言い出したことがありました。
新潟の湯沢から「切明温泉」に出て 志賀高原でお茶を飲んでいた時にです・・・
檜枝岐村は「介護の旅」でも『通過』しましたよ。勿論「日帰りドライブ」で・・・奥只見湖を新潟から トンネルを使わず 山道を抜けて そして檜枝岐村へ・・・「たちそば」の美味しかったこと。
「自家製豆腐そばの実がけ」美味しそうですね。「はっとう」も懐かしい。こちらの出身ではありませんが 亡き祖母がよくおやつに作ってくれました。
投稿者: 冬薔薇 (Dec 9, 2004 11:16:56 PM)
森野様
働く旅人・吉野斉です(笑)。
どんどん突き進んで旅人道を極めたいと思っております。
私の理想の旅人は車寅次郎なので「働きながら旅する」のは寅次郎流です!
そういえば烏来って温泉の名前だったのですね。数年前から同じ名前の足つぼエステにはまっている吉野ですが、由緒正しき名前だったとは。世界は広いですね。
最終回楽しみにしています。
投稿者: 吉野 斉 (Dec 14, 2004 5:45:50 PM)
冬薔薇様
日本海を旅したことはなんどかあるのですが、日本海の見える露天風呂にはまだ入ったことがありません。
日本海の独特の青色が好きです。冬の青はとくに。
「はっとう」は檜枝岐村に古くからあるものだそうですが、私も小さい頃父に作ってもらったお菓子にとても似ていて、すごく懐かしくなってしまいました。地方はまったく違うのですが、蕎麦粉を使った昔ながらのおやつだったのでしょうね。
それにしても日本海、見たいです。。。
投稿者: 吉野 斉 (Dec 14, 2004 5:51:59 PM)

