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コラム
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2006.03.28

最終回:タイ 日本人の温泉愛

世界の温泉紀行 by らくだ

chiangdao1 タイに行ってきた。せっかくならこの連載をしているうちに、どこか未踏ならぬ未湯の国へ行きたいもんだと思っていたところ、第5回の「スイス・メルヘンの町の温泉」にタイに住んでいる山内恵二さんからコメントをいただき、「よし、タイの温泉に決まりだ!」とあいなった。

1週間の旅で合計6カ所の温泉に入った。そのうち2カ所はお寺の敷地内にある温泉というのが、いかにも仏教国のタイらしい。山内さんには北部で4カ所もの温泉に案内していただいた。なかでも一番印象的だったのは川原の露天風呂、バーン・ヤーンプートッ温泉だ。

chiangdao2 タイの北部にあるタイ第2の都市チェンマイからさらに北上すること80キロ近くでチェンダオという町に着く。幹線道路を西に外れて約5キロ、バーン・ヤーンプートッ温泉は自然研究センター手前の川原にふつふつと湧いていた。

塩ビのパイプで土管状のコンクリートの浴槽に源泉が注ぐようになっているが、あくまで自然と一体化した露天風呂だ。浴槽や足湯状態になった自然の湯溜まりもある。温泉好きなら誰しも一目見ただけでウットリしちゃいそうな所だ。

源泉が直接当たる岩肌には湯の花がこってりとこびりつき、白く変色している。タマゴ臭もふくよかに鼻をくすぐる。場所は違えど、日本で慣れ親しんでいる温泉と同じだ。

訪ねたときは、おばちゃん4人のグループが“入浴中”だった。といってもタイのことだから裸になったりはしない。洋服のままで浴槽に入ったり、足湯状態で洋服の上から体にお湯をかけたりしている。

chiangdao3 洋服姿でビニールのシャワーキャップをかぶっている人もいる。洋服の上からお湯をバシャバシャ浴びているのに、髪の毛は濡らしたくないらしい。日本人の私には理解できない感覚だが、なかなかチャーミングな姿だ。

私には彼女たちの会話はもちろん理解できないのだが、おばちゃんたちは「ここはあんたたち(日本人)が作ったんでしょ?」と言っていたそうだ。

そうなのだ。ここはもともと川原のあちこちに温泉が湧いているだけだったという。数年前、チェンダオに住んでいる高橋恒樹さんを中心に、山内さんら日本人有志数人が協力して温泉を整備したのだという。

当局からの認可をもらった上でコンクリートの浴槽を運び込み、川原に据え付けてパイプでお湯を引いたというのだから、文字通り「手作りの温泉」だ。地元でもまだそれほど広くは知られていないらしいが、「日本人が作った露天風呂」とちゃんと認識している人もいるのだ。

chiangdao4この浴槽、日本人らしい細かい気配りが随所に感じられる。下部に湯を抜くための穴が作られていて、フタをあけると浴槽をカラにできる。このような露天風呂は掃除が行き届かずに内部がヌルヌルしてしまうことも多い(第6回のミャンマーの温泉が好例だ)が、これなら掃除もラクだ。しかも、浴槽の中には、腰掛けられるような段まで設けられている。皆さん素人だそうだけど、なかなかどうして本格的だ。

無色透明のお湯は熱め。暑い時期の日中だけに、そのままでは入れない。川原には温泉だけではなく、湧き水もあるそうで、パイプを調節すると源泉と湧き水をちょうどいい配分で混合して浴槽に投入することができるのだという。かなり単純な仕組みに見えるのだが、本当にうまくできている。それでも熱かったら、川からバケツで水を汲んできて入れればいい。

縁までなみなみと溜まった湯にざんぶり肩まで入る。もちろん、四方八方に湯がざぁっとあふれる。湯の中には注意して見ないと分からない程うっすらとした綿毛の湯の花が静かに漂っている。

日本のは違う全身真っ赤な赤とんぼがす~っと飛んでいった。標本から抜け出してきたような鮮やかな蝶もひらひらと飛んでいる。湯面に反射する日差しがまぶしい。こりゃ極楽だ~。夢のような数時間をすごした。

chiangdao5 昼時が近くなると青年2人がやってきた。昼休みを利用して来たという。コーラを飲んで、漫画を読みながら足湯につかっていた。地元でも知る人ぞ知る癒しの場となっているようだ。乗り物の窓からゴミをポイ捨てするのが当たり前のお国柄なのに、温泉の周辺にはゴ ミが落ちていないことからも、地元の人に愛されていることがよく分かる。

日本人による公有地での温泉整備を認可した当局の柔軟さ(日本だったら多分ダメでしょう…)にも感動したし、こんな秘密の場所に見ず知らずの私を案内してくれた山内さんの好意(ケチな私だったらヨソ者には教えないと思う)にも感動した。

そして何よりも印象に残ったのは、「誰もが自由に利用できる温泉を作ろう!」という皆さんの熱意だ。バーン・ヤーンプートッ温泉に入って感じた「日本人の温泉愛」は、温泉そのものよりもずっとずっと熱く、関係ない私まで誇らしい気分にさせてくれた。

この原稿を書いている最中、山内さんから嬉しいメールが届いた。浴槽がもう1つ増えるそうだ。この原稿がアップされるころには設置も終わっているかな。パワーアップしてからも、地元の人に静かに愛される「日本人の作った温泉」であり続けてもらいたい。

なお、山内さんにはこの場を借りて改めてお礼を伝えさせていただきます。2日に渡って案内していただき、本当にありがとうございました。また、私にコラムを書く場を与えてくれ、バーン・ヤーンプートッ温泉を訪ねるきっかけを作ってくれた@ニフティ温泉のスタッフの皆さん、どうもありがとうございました。お世話になりました。

そして最後になってしまいましたが、私と一緒に世界のあちこちの温泉をふらふらしてくれた読者の皆さん、どうもありがとうございました。ペース配分を考えていなかったので、ヨルダンやコスタリカなどの温泉を紹介することができなくなり、どうもすみません。

text by らくだ | 2006.03.28 | [ 世界の温泉紀行 ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (2)

2006.03.14

第9回:ベトナム 濃厚な硫黄泉にクラクラ

世界の温泉紀行 by らくだ

vietnam1 ベトナム中部のフエはベトナム最後の王朝の都があった古都と、ベトナム戦争の激戦地という2つの顔がある。すっかり平和になった現在では世界遺産に登録されている遺跡めぐりをする観光客が後を絶たない。

遺跡めぐりにも興味はある。でも、私はここでも温泉最優先だ。わざわざベトナムまで来て温泉に入らなくても…という人もいるけれど、なかなかどうして、ベトナムには予想以上に良質の温泉がある。フエの中心部から8キロほど離れたところにも、良質で濃~い温泉があった。

vietnam2 フエのミーアン温泉リゾート(英語はMyan Onsen Spa Resort)だ。看板に堂々とOnsenの文字が書かれているのが、日本人としてはくすぐったくもあり、嬉しくもある。ここは日本とベトナムの合弁企業が経営する温泉リゾートなのだ。

私が訪問した2005年春の段階では、まだ開発途中なのか入り口周辺はあちこち工事中。工事関係者以外の人の姿もなく、最初はとまどってしまった。宿泊用のコテージが散在する敷地内をさまよっているうちにざわめきが聞こえ、声を頼りに進んで見えてきたのは大きな温泉プール。

vietnam3 ベトナム人の団体観光客20人ぐらいが入っていて、きゃぴきゃぴ騒いでいる。湯は白濁しているだけじゃなく、うっすらと緑色を帯びていて美しい。かなり濃厚な感じだ。プールに近づいて湯をじ~っと見ていたら、私に気づいた施設の人が近寄ってきた。

持参したベトナム語会話集で「風呂に入る」という単語を見せたら、「よし、分かった」という感じでうなずき、一番奥のコーナーに行けと指さす。建物と建物のすきまから入っていくと、周りから隔離されたプライベートな?空間になっていた。真ん中に小さめの温泉プールがあり、プールを囲むように個室風呂が並んでいる。

vietnam4 女の人(この人は片言の英語と日本語を話すので助かった)がやってきて個室に案内してくれた。。中国やミャンマーで入ったのと同じような感じだ。ホテルにあるようなバスタブがあり、手前にはタイル張りの床に椅子と台が置かれている。

台の上にはバスタオルと石けん、シャンプーのほか、ベトナム語とフランス語で書かれたミーアン温泉の説明とおぼしき文書(まったく理解できず)、あと短パンがあった。ほかの温泉でベトナム人女性が短パン・Tシャツ姿で入浴しているのを見たから、個室風呂でも短パンをはいて入る人がいるのかもしれない。

案内の女性はバスタブの上にあるレバーの操作方法を教えてくれ、「5分入ったら休息してください」と言って出ていった。給湯パイプは手前が熱め、奥がぬるめの湯になっている。硫黄泉で源泉は52度あるそうだ。

vietnam5 このお湯、西洋式の浅いバスタブなのに底が見えないほどの濁り具合。硫化水素臭も強力だ。なめてみたら酸っぱさを超えて刺すような刺激が舌にビリッと来た。

海外の温泉というのは無色透明でぬるく、水着でプールに入るということが多い。これだけ強力な温泉に入るのは初めてで、しかもベトナムでこんな湯に出会えるとは予想もしていなかった。意外なところで意外な湯に出会えるもんだ。

しばらくしたらドアがノックされた。そういえば、一目で温泉の色に心を奪われてしまっていたので、私としたことが入る前に料金や時間制限をきちんと確認していなかった。そろそろ時間なのかもしれない。

服を着たものの、まだ名残惜しい。先ほどの女性にダメもとで「プールにも入っていい?」と聞いたところOKだという。水着まで持ってきてくれた(でも持参したのを着用した)。このまま個室風呂を更衣室に使っていいという。

vietnam6 プールは肩口までの深さがあり、硫化水素臭で頭がクラクラしそうになった。こうしてみると、個室風呂のドアがノックされたのも、私の様子をみるためだったのかもしれない。

プールに入ってあたりを見回してみると、周りにあるのはすべてが個室風呂というわけではなく、クリニックと書いた一角もあった。患者らしき人はいなかったが温泉を利用した治療も行っているようだ。

入浴料は5万ドン(約370円)。宿泊先のゲストハウスで入手したパンフレットには5ドルと出ていたのだが、それよりも安かった。最初にみた大プールの入浴料も5万ドンだそう。個人客と団体客で大小のプールを使い分けているかどうかは、言葉の壁があって確認できなかった。敷地内で点在するコテージは、それぞれがこの温泉を引いている。

とにかく大満足の一湯。

注:入浴料は2006年3月11日現在の為替レートで換算。

text by らくだ | 2006.03.14 | [ 世界の温泉紀行 ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

2006.02.28

第8回:ハンガリー(2)温泉湖に漂う

世界の温泉紀行 by らくだ

heviz1 ハンガリーにやって来た最大の目的はもちろん温泉だけど、そのなかでもへーヴィーズの温泉湖は何年か前にテレビで見てからず~っと行きたいと思っていた。なんたって湖が丸ごと天然の温泉で、そこに浮き輪でプカプカ浮かんで入るっていうのだから、日本じゃ絶対に経験できない。

しかも、その大きさがケタ外れだ。直径は約200メートル。面積が4万7500平方メートルといってもピンと来ない人は、東京ドームとほぼ同じ大きさといえばイメージがつかめるだろうか。

ブダペストから約200キロの距離ならそれほど遠くないと思い、日帰りで出かけた(あわただしいから日帰りはあまり薦めない)。ブダペスト南駅から列車でケストヘイという駅まで出てバスに乗り換える。

heviz2 ケストヘイの駅前にバス停がいくつかあり、ヘーヴィーズ行きのバスは1番乗り場。15分ほどで温泉の北口に到着する。

入場券は3時間券から1日券まである。あまり時間がないので迷わず3時間券を買う。私が行ったときは700フォリントだったのだが、いまは900フォリント(約500円)に値上がりしているようだ。

自動改札機みたいな機械に入場券を通し、帰りも改札機に差し込んで利用時間を確認するシステムになっている(入場券は回収されてしまう)。

入場すると、道の両側には草地があり、水着姿の人がビーチマット上でゴロゴロしている。ビーチかプールにやってきた感じだ。

そのすぐ先に温泉湖があった。といっても一見しただけじゃ温泉だなんて分からない。多くの入浴客は浮き輪をして漂っているし、温泉の中にはハスの花が咲いている。監視員がボートに乗って巡回しているというのは、日本人の感覚だと温泉ではありえないことだ。

heviz3 仕組みがよく分からないまま、入場したばかりらしい人にくっついて左手にある建物に行く。そのまま2階に行くと、白衣のおばちゃんがいて、チケットをみせると私用のロッカーを割り当ててくれた。水着に着替え、おばちゃんにロッカーの鍵を閉めてもらう。

浮き輪を借りようとウエストの周りに手を動かしたら、すぐに理解して持ってきてくれた(浮き輪レンタルは有料でデポジットも必要)。温泉の湖へいざゆかん!

デッキ状になっている岸から階段を下りていくと、うわっ、本当に温泉だ。温かい。そしてステップはすぐになくなり、足がつかない。水は灰色がかった緑色に濁っている。ハスの花のピンクがまぶしい。メダカみたいな小さな魚が泳いでいる。

温泉らしからぬ温泉に思わず「ウフフ…」と笑みが浮かんでくる。周りの人たちからすれば不気味な東洋人に見えたんじゃないだろうか。

heviz4いったん湖に入ると、日本の温泉みたいに浴槽内側の段に腰掛けてまったり…なんてことはできない。足がつかないから、泳ぐか、浮かんでいるか、水面上に設置された丸太(別府温泉保養ランドの泥湯にあるような感じ)につかまっているしかない。

湖の真ん中には小屋状の建物があり、そこまで泳いで行った。いったん水から出て小屋に入ると、そこは透明な板で囲まれて室内プール状になった一角がある。こっちにも入ってみる。なるほど温度は少し高め。寒い時期は利用者が増えそうだ。

湖の深さは平均36メートルもある。もちろん全部が温泉で満たされている。湖底から湧いている温泉の湧出量は毎分2万5000リットル余り。湖にはゆっくりとした流れがあり、この豊富な湧出量のおかげもあって、湖のお湯は30時間ほどですべて入れ替わっているのだという。

heviz5 自然の神秘を感じつつ、湖に入ったり、デッキで日向ぼっこしたりを繰り返す。ほぼ3時間ギリギリを温泉で過ごし、食事をしてから直行バスでブダペストに戻るときは、心地よい疲労感で爆睡していた。

(注)入浴料は2006年2月23日現在の為替レートで換算

text by らくだ | 2006.02.28 | [ 世界の温泉紀行 ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

2006.02.14

第7回:ハンガリー(1)温泉天国ブダペスト

世界の温泉紀行 by らくだ

budapest1 ハンガリーは日本のライバルともいえる温泉大国だ。ハンガリーを訪れる旅行者の7人に1人が温泉に入るそうで、日本も「ONSEN」の世界的な広報活動にもっと力を入れなくちゃいけないなぁと思う。

首都のブダペストにはざっと数えて100余りの温泉があるといわれている。しかも、オスマントルコ統治時代の雰囲気を残した共同浴場から一流ホテル付設の大型入浴施設までよりどりみどり。バラエティに富んだ施設があって飽きさせない。何日でも滞在したくなってしまう温泉天国だ。

budapest2 一番有名なのはセーチェニ温泉だろうか。ブダペスト中心部近くの大きな公園の中にあり、東京でいったら日比谷公園か代々木公園の中に大規模温泉施設があるって感じだ。プール、温泉入浴だけでなく、温泉治療を実施するクリニック風の一角もある。

入浴スペースは水着着用ながら、ほのかな硫黄臭漂う温泉を満喫できる。あちこち迷いながら外に出ると、そこにあるのは露天風呂じゃなくて広いプールが3つ。真ん中のプールは体育会系の人向きだ。ここではスイミングキャップが必要で、みんな一生懸命に泳いでいる。

budapest3 左右のプールはまったりモード。左手のプールには台がしつらえてあり、真っ黒に日焼けした男性たちが腰まで温泉につかって立ったままチェスを楽しんでいる。現地で会った人に聞いたところによると、ブダペストの温泉はパリのカフェに相当するのだそう。つまり文化人・芸術家の交流の場になっているというのだ。

入浴料は更衣室でキャビン(個室の更衣室で自分の荷物も個室内に残せる)を使うと2300フォリント(約1280円)、日本式の更衣室&ロッカーを利用すると2000フォリント(約1120円)で、入館時に前払いする。3時間以内に退出すれば数百フォリント返金してもらえる仕組みだ。営業時間は設備ごとに異なり、だいたい午前6時から午後7時まで。

ドナウ川の西側にあるゲッレールト温泉は、1918年創業の老舗ホテルに併設されている。温泉浴場、室内プール、屋外プールのそろった大規模施設だ。

budapest4 ここも入浴料を前払いして、利用時間に応じてあとで返金してもらうシステム。更衣室に入ってチケットをおばちゃんに渡すと、エプロンと袋入りのボディソープを渡してくれた。

このエプロンがなんとも中途半端な代物。胸を隠すと下が出て、下を隠すと胸が出る。金太郎の前掛けみたいだ。一体どう使えばいいのだろう? このエプロンを身に着けている人は見かけなかったのでいまだに分からない。私も水着姿になり、エプロンはタオル代わりに使った。

男女別の浴場は体育館みたいに広い。高い天井はカマボコ型のドーム。くすんだ緑のタイル張りはどことなくトルコ風だ。広い浴槽は高温(36度)、低温(32度)の2種類ある。

高温浴槽に入っている人は少ない。西洋人は熱い湯が苦手な人が多い。以前、アメリカ人の友人を箱根に案内したら、あまりにも熱かったらしく「ゆでられる卵になった気分」と言っていたっけ。

budapest5 男女別の浴場奥は、室内プールに続いている。ゲッレールト温泉を紹介するときはここの写真が出てくることが多い。ここで泳ぐにはシャワーキャップが必要だと渡されたが、水があまりにも冷たいので泳ぐのはやめておいた。

室内プールから外に出ると、そこは遊園地のプールのよう。温泉に中年以上の人が目立ったのに対し若者が多い。波の出る温泉プールまであり、カップルが楽しそうに波間に漂っていた。

セーチェニと同様、更衣室でキャビン(個室)を使うか、ロッカーを使うかで前払いする料金は3000フォリント(1670円)か2500フォリント(1400円)。3時間以内に退出すれば100~600フォリントが返金される。営業時間は午前6時から午後7時までで、10月から3月の土日は午後5時まで。

最後はお気に入りのキラーイ温泉。建設が始められたのは16世紀半ば。お湯は近くのルカーチ温泉からの引き湯だが、建物はオスマントルコ時代に建造された部分が多く残っている。浴場内部は薄暗く、歴史の重みを感じさせる。

budapest6 ドーム型の屋根はところごとろに小さな丸いガラス窓があり、八角形の浴槽に差し込む光が幻想的だ。ここは男性と女性が日替わりで利用するようになっていて、日本みたいに裸で入浴できるのも嬉しい。

観光客が多いときは水着派が優勢だそうで、たまたま私の行ったときはほとんど地元のオバちゃんばかりでみんな裸だった。ヨーロッパでハダカの入浴をしたのは、今のところここだけだ。ちなみにここはゲイの男性の出会いの場として知られているそうなので、男性は要注意かも。

男性は火木土、女性は月水金の利用となっている。男性の利用日は午前9時から午後8時まで、女性の日は午前7時から午後6時までと、なぜか微妙に入浴時間帯に差がある。入浴料は1100フォリント(約610円)でセーチェニのような返金システムはない。

どこの温泉も全般的に入浴料が割高だと感じるのだが、地元の人は大幅に割安になる年間パスを利用しているようだ。

ほかにはルカーチ温泉、ダンダール温泉、ルダシュ温泉に行ったのだが、文字数の制限があるので省略させていただく。私が行ったときに改装中だったラーツ温泉も今では営業している。女性はプールと個室風呂しか利用できなかったルダシュ温泉も、昨年12月に改装オープンし、今では試験的に女性の入浴時間帯が設けられたそうだ。

(注)入浴料は2005年2月10日現在の為替レートで換算。

text by らくだ | 2006.02.14 | [ 世界の温泉紀行 ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

2006.01.31

第6回:ミャンマー ヌルリ&プカリの怪し湯

世界の温泉紀行 by らくだ

inle ミャンマーのほぼ中央にある高原地帯にインレー湖という大きな湖がある。この湖畔に温泉があると聞いて訪ねてみた。車や自転車で行くこともできるが、せっかく湖に来ているのだからとボートをチャーターして近くのカウンダイン村まで行き、そこから10分余り歩く。

歩いている間に車は一台も通らない。のんびりと牛を追う男性が微笑みながらすれちがっていく。こんなところに温泉があるのだろうか。ちょっと不安になる。本を小脇に抱えた青年が前から来たので「ホットスプリング?」と尋ねると、「もうちょっと先だよ」とニッコリ教えてくれた。

歩いていくと人の気配がしてきた。柵に囲まれた建物があり、その周りに露店が出ている。お菓子や飲み物を売る店のほか、簡単な食事ができるレストランのような店もある。ここがその温泉らしい。建物の中に入浴施設があるのだろう。

gensen 店を一通り見物してふと足元を見ると、ポコポコと湧いている源泉に気づいた。思わず「うわ~」と声を上げてしまった。気温30度以上の環境でうっすらと湯気をあげているその源泉は、硫黄の匂いが鼻をくすぐる。これまで温泉なのか温水プールなのか分からないところも多かったけど、これは間違いなく温泉だ。ちょっと触ってみたら、少なくとも60度ぐらいありそうだった。

その源泉はいったん池のようなところに引かれ、そこから2つの露天風呂には配湯されている。多分、源泉の温度を冷ますためだろう。右側の風呂は回りに囲いも何もない。露天風呂というより野天風呂、いやほとんど野湯といった感じだ。男の子が水浴びというかお湯浴びをしている傍らで、女性が2人洗濯をしている。

sentaku 左側の風呂は申し訳程度に高さ1メートルほどの壁で周りが囲まれ、出入り口にも一応目隠し状の壁がある。こちらは誰もいない。身振り手振りで「どちらに入ればいいのですか?」と洗濯中の女性に聞いたら、どっちでもよさそうだ。

壁のあるほうが女湯に違いないと勝手に判断。脱衣所・更衣室というようなものはないのだが、そんなこと気にしちゃいられない。腰巻の布を胸のあたりに巻き付け水着に着替える。やおら着替え始めた私に夫は唖然としていた。

洗面器も手桶もない。そもそも洗い場のスペースというものもないに等しい。浴槽から周囲の壁までは50センチくらいしかないのだ。泉源では無色透明だった湯は灰色がかった深緑色に濁っている。両手ですくった湯を何回か体に浴びたあと、中に滑り込んだ。

roten キリッと熱い。次の瞬間、足がぬるっとした。しばらく掃除をしていないようだ。浴槽の中央に向かって一歩ずつ進むたびにぬるぬるした感触が足の裏にあり、底にこびりついていたらしい黒っぽいヘドロ状の物体が音もなくプカリと浮かび上がってくる。

ヌルリ、プカリ、ヌルリ、プカリの繰り返しで、後ろを振り返ったら黒いモロモロだらけになっていた。これで伝染病にでもかかったら笑い話では済まないなぁ、自分も相当の物好きだなぁ、と苦笑する。すぐ脇の道をすごい勢いで通りすぎて行ったバスの窓から何人かが私を指差した。見世物になっちまった…。

次に建物内にある入浴施設に向かう。ここは敷地内に入るだけで1ドル必要だ。これで左右に分かれている男女別の大プールに入ることができる。温泉にまったくといっていいほど関心のない夫に付き合ってもらっているので、1人3ドルの追加料金を払って貸切プールを利用することにした。

kashikiri 貸切プールは全部で3つあり、一番大きなプールはカラ。泳ぐには小さすぎるプール2つを往復する。温度は熱めとぬるめに分かれていた。こっちの湯は無色透明で温度もかなりぬるめながら、硫黄の香りはまったく感じられない。伝染病の心配はしなくてよさそうだけど、なんか物足りない。

帰り際、通路にドアがたくさん並んでいるのに気づいた。尋ねたら個室風呂だった。中国の安寧温泉で入ったのと同じようなタイプだ。せっかくなのでこっちにも入っていくことにする。これも3ドル。

private_bath 浴槽は1.5メートル四方程度のタイル張りだ。自分で源泉と水のレバーを操作して好みの湯温にする。源泉だけだと熱いので加水しないと入れない。こちらは硫黄臭は感じられなかったもの、ほんの少し金属臭(単にパイプの匂いか?)も漂い、プールよりも鮮度を感じる湯だった。

何がなんでも自然&野生が一番というあなたには無料の露天風呂、浴槽につかって体も洗わなくちゃ温泉に来たとはいえないという人には個室風呂、お湯へのこだわりはそれほどなくてミャンマーの温泉に入ったという話題づくりをしたいという人にはプールをお勧めする。

text by らくだ | 2006.01.31 | [ 世界の温泉紀行 ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

2006.01.17

第5回:スイス メルヘンの町の温泉

世界の温泉紀行 by らくだ

station スイスで一番よく知られている温泉地のバーデンは、最大都市のチューリヒからSバーンという近郊列車に乗ってわずか30分で着く。東京から熱海や箱根に行くよりもずっと簡単だ。

駅前の観光案内所には親切な女性がいて、地図をくれたうえで質問していない文化イベントのことまで教えてくれた。駅を出て左手に坂を下りていくと温泉街、右手には旧市街が広がり、旧市街には青空市が出ているという(私が行ったのは真夏の週末だった)。

私は市場が大好き。温泉を後回しにしてまず旧市街に回った。レンガ色の屋根にパステル調の壁の家々が立ち並ぶ。メルヘンの世界に迷い込んだかのようだ。

案内所で聞いた通り、旧市街の家には一軒ずつ屋号が記されている。その家々の前に野菜や果物、生花を売る屋台が出ていた。旅行者には関係ないものがほとんどだが、ぶらぶら歩いているだけでスイスの人々の普通の生活が伝わってくるようで楽しい。

oldtown 旧市街を一通り散策して温泉街へ向かう。駅から左手に緩やかな坂を下りていく。坂を下りきった左手が温泉街。店やレストランも少なく、ひっそりとした佇まいだ。歩いている人もほとんどいない。

せっかくなら観光客だけじゃなくて地元の人の利用も多いところに入りたいと思い、観光案内所で古くからある温泉施設を教えてもらっていた。私としては数百円程度で入れる日本の共同浴場をイメージしていたのだが、教えてもらったシュバイツァーホフ(Schweizerhof)はどうみても高級路線。外壁に貼ってある料金表によると、入浴料は一番安くても80スイスフラン(約7200円)! 温泉浴場というよりも、エステとかスパとかいった感じらしい。そもそも外観からして私のようなバックパッカーはお呼びじゃないってのは一目瞭然だ。

thermalbaden あっさりと諦め、庶民的なテルマルバーデンThermalBaden)へ行く。殺風景なコンクリート造りの入り口は、旧共産圏の建物みたいで一瞬ひるんでしまった。建物の入り口は階段を下りて左手。内部はスイスらしく、ゴミひとつ落ちていない。床はピッカピカに磨き上げられている。

こちらは21スイス・フランを受付で払った。このうち5スイス・フランはロッカーのキーデポジット(帰るときにロッカーの鍵を渡すと返金してもらえる)なので、入浴料は16スイス・フラン(約1450円)になる。

ロッカーの鍵はリストバンドではなく、安全ピンで水着に付けるようになっている。ちょっと旧式なのだ。水着は日本から持参したが有料でレンタルできるそうだ。

pool1 ここも更衣室は男女共用。でも、オーストリアで場慣れした私(第3回の「男女一緒に着替えましょう!?」参照)はうろたえず、個室を利用して着替える。更衣室の床も小まめに拭いているみたいで、まったく濡れていない。これならサンダルを持参する必要もなかったかな。

いざ温泉へ。といっても屋内にあるのは学校にあるような25メートルプールみたい。強いていえば、手前の一角がジェットバスになっているのが違いかな。このジェットバスはふくらはぎの辺りに水が細く勢いよく出てくる。ほかの部分はお湯が出てきて、この温度差が気持ちよかった。残念ながら温泉らしい肌触りはない。

pool2 屋外プールはなぜか高齢者のパラダイスといった雰囲気。屋内プールよりも狭いのに、人はこっちのほうが多い。真ん中でプカプカと浮かんだり、プールサイドでの世間話に花を咲かせたり、プールサイドのデッキチェアで本を読んだりと、それぞれ思い思いにくつろいですごしている。

海外の温泉はどうも日本とは別物という気がしてならない。湯もぬるいし、肌触りも温泉というより温水プールみたい。ここは46.6度の硫黄泉だそうなんだけど、日本の硫黄泉のようなにおいは皆無。タイルにカルシウム成分らしき白い析出物がこびりついているのをみて本当に温泉なんだなと実感した次第だ。高齢者が多いのも、温泉の効能があるからなのだろう(と信じたい)。

プールから上がると、係の人がフロントから出てきて真っ白なタオルを肩にかけてくれた。しかもタオルが温められている。絶妙のタイミングでの温かいタオルのサービスは、とても印象に残った。

baden 帰り際、温泉街の入り口に花の植えられた水飲み場のような所があった。あとで資料を見て分かったのだが、これが源泉だそうだ。スイスは源泉までもが童話のように愛らしい。

(注)入浴料は2006年1月6日現在の為替レートで換算。

text by らくだ | 2006.01.17 | [ 世界の温泉紀行 ] | 固定リンク | コメント (5) | トラックバック (0)

2005.12.27

第4回:中国 湯攻めと鼻クソお姉さん

世界の温泉紀行 by らくだ

PICT0081 中国中南部にある雲南省の省都・昆明は、日本では陸上選手の高地トレーニング地として有名(帰りの飛行機に渋井陽子選手が乗っていた)だが、温泉ファンの合宿地としても有力な候補地だ。というのも空港前のエアポートホテルに「温泉浴」と看板が出ているほか、駅周辺にも温泉賓館(温泉旅館)が散在しているのだ。

一番有名な温泉は昆明郊外、バスで1時間弱の安寧温泉だ。この辺りで「温泉」といえばこの安寧温泉を指す。バスの切符売り場にも行き先は「温泉」としか書いていないし、鉄道駅もシンプルに「温泉」という名前だ。バスの切符は5元(約70円)。

中国人民に混じってバスで日帰り温泉の旅に出かけた。初夏の日曜日、家族連れや若者でバスはほぼ満員。1時間近く乗っていると、バスは丘を越えて坂道を下り終点の安寧温泉に着いた。川に沿うように温泉賓館が何軒かある。その間には浮き輪や水着を売る「海の家」みたいな店もある。海から遠く離れた内陸部の雲南省にあって、温泉は海水浴と同じような位置づけなのかもしれない。

PICT0101 歩いているうちに「天下第一湯」と壁にデカデカと書いたところをみつけた。安寧温泉賓館の別館に相当する入浴施設らしい。中に入ると、中庭を囲んでL字型になった2階建ての建物があり、2階の廊下に中国らしく赤い提灯が下がっている。入口近くにある看板から推察するに、個室風呂とプールの二種類あり、個室は大きさや設備でさらに何種類かに分かれているようだ。

どうせなら浮き輪や水着は勘弁してもらいたいと思い、1人から3人用の個室を選んで30元(約430円)を払う。これは1室の料金なので1人でも3人でも同額。1人だからちょっと割高に感じる。個室の中でも一番安いので、石けんなどの備品はついてこない。

PICT0097 受付のお姉さんは入浴料と引き換えに入浴券をくれ、身振りで2階行くようにと指示した。中庭の池には源泉がポコポコ湧いていてい感じだ。

階段脇の壁には安寧温泉の由来が記され、泉温は40-43度で無色透明、カリウムやカルシウム、ナトリウム、遊離二酸化炭素などを含むと書いてある。2階の通路には男女1人ずつの従業員がいて、私の入浴券を見て部屋に案内してくれた。

個室は床も浴槽も白いタイル張りだ。手前に1.5畳分ぐらいの脱衣所スペースがあり壁際に木製のベンチが置いてある。サンダルも3足分ある。タイル張りの階段を4段上ったところが浴槽の縁。そこから4段降りると浴槽の底。1段の幅が広いので、実際には5、6段に感じる。

PICT0090個室の内側から鍵をかけると間もなく、浴槽の下部にある穴から勢いよく湯が噴き出してきた。無色透明だ。中庭の池は緑色に見えたがコケだったのかな。

数分もしないうちにお湯はちょうどいい水位までたまった。浴槽上部に穴があるので、そこまでお湯が達したら西洋式のバスタブみたいにお湯が排出されるのだと思っていたら、あっという間にお湯は穴の上まで達し、ものすごい勢いで縁から床にあふれ出してきた

PICT0091 いったんあふれ出すと手がつけられない。これじゃ水攻めならぬ湯攻めだ。脱衣スペースの床はお湯浸しどころじゃない。あふれたお湯が床で渦を巻き、サンダルが渦の中でグルグルと回っている。さらにドアのすきまから廊下に勢いよくあふれ始めた。なすすべもない。とにかく何かすごくヤバイことになっているのは間違いない。

あわてて英語と日本語で「ストップ!」とか「止めてぇ!」とか叫んだが誰もやって来ない。こっちから外に出るしかない。温泉の感触を楽しむ間もなく体を拭いて服を着ようとしたところ、外で何か声がしてお湯が止まった。やっと気づいてくれたらしい。

しばし階段に座り込んで呼吸を整え、もう一度温泉に入り直す。なんかゆっくりできないなあ。ハプニングにあわてまくったせいか、最後まで癒されずに終わった。

PICT0094 入浴を終えて個室の外に出ると、私の個室からあふれた湯で廊下の端は水浸し。この分だと階下にも水は流れ落ちたに違いない。

それなのに私を案内してくれたお姉さんは何事もなかったかのような顔をして鼻クソをほじくっている。私の顔を見ると袖口で指を拭いて鼻をフンと鳴らし、「いい湯だったでしょ?」という顔をして微笑んだ。

お姉さんの悠然とした態度には、大陸的なものというか中国4000年の歴史というか、とにかく私の理解と常識を超えた何かがあり、こんな些細なことでひ~ひ~言ってジタバタあわてまくった私はなんだか恥ずかしくなった。

とかく海外の温泉は癒されることよりも疲れることのほうが多い。まだまだ修行が足りないようだ。

(注)料金は2005年12月23日現在の為替レートで換算。

text by らくだ | 2005.12.27 | [ 世界の温泉紀行 ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.12.13

第3回:オーストリア 男女一緒に着替えましょう!?

世界の温泉紀行 by らくだ

bbw1 ヨーロッパの温泉はプールが多い。更衣室で水着に着替えて“入浴”する。オーストリアの首都ウィーン郊外にある温泉地バーデン・バイウィーンのレーマーテルメ・バーデン(Römertherme Baden)という所に行ったとき、更衣室に一歩足を踏み入れて文字通り「固まって」しまった。

真っ裸の若いカップルがいる。思わず目をそらしたら、それだけじゃない。男性があちこちにいるのだ。な、な、な、なんで女性用更衣室に男がいるのよっ! こんな所で大和撫子の私が着替えられるわけないじゃない! 出鼻をくじかれ、思わず回れ右をしそうになった。

bbw2a でも、2時間分の入浴料を既に前払いしちゃったんだよね。どうしようと更衣室の入口あたりでグズグズしているうちに、ロッカーが大小2種類あるのに気がついた。よくみると、大きなロッカーには人が出たり入ったりしている。

なんのことはない。ロッカールームのあちこちに個室状の更衣室が散在しているのだった。幅の細い扉がロッカー、広いのが更衣室だ。ロッカールームは男女共用で、空いている個室を利用して着替え、空いているロッカーに荷物を入れる仕組みだった(ロッカーは2ユーロ硬貨が必要だが返却される)。

冷静になってみると、合理的でいいシステムかもしれない。たとえば小さな子どもがいる家族連れの場合、親1人で子どもの面倒を見ながら着替えるのは大変だけど、夫婦が一緒だったら1人が着替えて1人が子どもの面倒を見ることができるもんね。


bbw3 これが日本だったら、最近では女性用車両なんていうものが増えているご時勢からいっても、「のぞき」とか「盗撮」とかの問題が出てきそうだ。こんなところにオーストリアの社会の成熟を感じつつ、水着に着替える。

で、肝心の温泉はというと、これがもうまったくのプール。よく確認しないで最初から深いところに入ってしまい、身長168センチの私でも足がつかない。準備体操もしていないのに真剣に泳ぐはめになった。「日本人旅行者が温泉で溺死」なんてことになったら、しゃれにもならない。


bbw4 消毒剤の香りもほのかに漂い、温泉だと言われなければ普通の温水プールと違いはない。かなりガッカリしつつ露天というか野外のスペースに出てみると、それなりに温泉らしい空間があった。その名も「硫黄プール」。もちろん水着着用だが、湯温が35度と高めで水深は浅く、浴槽回りに腰掛けてじっとしている人が多い。

日本の温泉とは似ても似つかないが、足のつかないプールで必死に泳ぐのに比べたら、それなりに入浴風景らしくみえる。年齢層も、屋内プールで泳いでいる人たちよりもかなり高い。「ここでの入浴は20分まで」という掲示があったことからも、温泉に違いない。

bbw5 傍らに小さな噴水みたいなものがあるのを見つけた。石像の口の部分からちょろちょろと生温かいお湯が出ている。しっかりとした硫黄臭も感じられる。どうもこれが源泉らしい。「非飲用」という表示しかない。とはいえどうみても小さいし浅そうだから入浴用じゃないことは明らかだ。人の目も気になるので、この噴水に浸かるのはやめておいた。

建物は壁の一辺と天井がガラス張りになっているので、天気が良ければ日光が差し込んで気持ちいい空間に違いない。お湯は硫黄泉で源泉は36度あるらしいのだが、屋内の大プールは部分によって30度と27度と分かれ、野外の硫黄プールは35度、もう1つは30度。プールとしては妥当な温度なんだろうが、肌寒い日に入る温泉としては日本人にはちょっともの足りなく感じた。

2005年12月現在の入浴料は平日2時間まで大人8.5ユーロ(約1200円)で、土日祝日は少し高くなる。子ども、学生や高齢者・身障者は割引になるほか、1日券や家族券もある。営業は午前10時から午後10時。ウィーン中心部から路面電車バーデン線で行くと分かりやすい。終点で降りて徒歩数分。

バーデン・バイウィーンは「ウィーンのそばのバーデン」という意味で、バーデン(Baden)とはドイツ語で入浴のことだ。バート(Bad)は風呂で、英語のバス(Bath)に当たる。ベートーベンが「第九」を作った地としても知られている。

(注)入浴料は2005年12月9日現在の為替レートで換算。

text by らくだ | 2005.12.13 | [ 世界の温泉紀行 ] | 固定リンク | コメント (2) | トラックバック (0)

2005.11.29

第2回:韓国(2)浸かる所とこする所

世界の温泉紀行 by らくだ

日本人なら初めて韓国の温泉に行ってもそれほど戸惑わないはずだ。受付で入浴料を払って男女別の脱衣所に入る。大きな所だと受付で入浴券を買い、脱衣所の入口で券を渡す仕組みになっていることもある。

furo 脱衣所の入口にのれんはなくても、男女の区別は文字の色や絵でたいてい分かるようになっている。心配な人は、左に記したハングル文字で男女を示す左側の文字だけ覚えておけばどうにかなる。右側の文字は「タン」と読み「湯」のことだ。もちろん覚えていなくても、キョロキョロしていれば、受付の人かほかの入浴客が教えてくれるだろう(韓国人は概して面倒見がいい)。ほかの人について行くという手もある。

photo1 脱衣所には必ずカギ付きのロッカーがある。また日本の温泉と違い、フェイスタオルは最低でも必ず1本は貸してもらえる。無料というか入浴料に貸しタオル代込みなのだ。大きな入浴施設では棚にどっさりとタオルが積んであって、何枚でも好きなだけ使える太っ腹な所もある。(写真はイラストと色で男女の見分けがつくようになった脱衣所入口)


石鹸も置いてあるから、髪を洗わない上にタオル1本で洗って拭いてOKというシンプル&ワイルドな人は何も持たずに行っても大丈夫だ。ちなみにほとんどの所は歯磨きのチューブも置いてある。歯ブラシくわえて入浴している人が多いのも韓国ならではの光景といえる。

日本との大きな違いに面食らったのは、浴場でも脱衣所でも、みんなタオルで前を隠さないこと。年季の入ったおばあちゃんも、うら若きお姉ちゃんも、みんなそのままの姿で堂々と歩いている。聞いたところによると、もちろん男湯も同様らしい。「郷に入っては…」というから試してみる。なんかスカスカして落ち着かないし恥ずかしい。

「まったくもう韓国人つーのは、恥じらいの心を知らないんだから」なんて思いがちだが、韓国人に言わせると「日本人はタオルで前を隠して恥ずかしがっている割には、混浴なんていう文化もあって訳わかんない」そうだ。

photo2 なるほど。自分の中では日本の温泉での混浴は入浴文化の一部であり、タオルで前を隠すのはマナーの一部という位置付けなんだけど、その2つを組み合わせて考えたことなんてなかったな。海外の温泉に行くと、よそ者の視点で日本の温泉を考えることができる。それに韓国式のスカスカ歩き?も、慣れてくると爽快感があっていいもんだ。(写真は温泉銭湯の脱衣所)


浴場に足を踏み入れて感じるのは、浴槽に入ってお湯につかっている人に比べ、洗い場にいる人のほうが多いこと。どこの温泉に行っても、熱心にアカスリをしている人が目に付く。別料金で頼めるアカスリもあるが、ほとんどの人はマイグッズを持ち込み、自分1人で、親子で、友人同士で、それぞれ懸命に体をこすっている。

韓国で銭湯に行って周りを観察して来たという男友達によると、韓国人男性の腕や足には毛がなく、日本人と韓国人の男性は一目で見分けられるそうだ。ひょっとしてアカスリをしているうちに自然とこすり取れてしまうのだろうか?

photo3 考えてみると、日本人にとって温泉というか風呂は「浸かる所」、韓国人にとっては「こする所」なんじゃないだろうか。浴槽に入って「ぷはぁ」と大きく息をしたり、「う~ん、極楽」などとつぶやいたりしちゃう日本の温泉とは明らかに別物。洗い場に必死さというか真剣さがみなぎっているのだ。(写真は高級ホテル内にある温泉施設の洗い場)


これまで韓国では大自然の景観を楽しめる野生的な野天・露天風呂には縁がない(外国人旅行者という立場ゆえ、情報の入手が難しいのも一因だ)。大規模健康ランド的な施設はレジャーとしては楽しめても、日本人からみると温泉情緒には乏しい。

温泉銭湯みたいなところは窓は小さく天井は低く、薄暗くて熱気がこもった場所というイメージが強い。どことなく秘密めいた雰囲気なのは温泉マーク(連載第1回の「温泉マークの不思議」を参照)と同様かも。

photo4 入浴料は温泉銭湯・公衆浴場みたいな所で2500-4000ウォン(約290-460円)ぐらい。各種イベント風呂を備えた健康ランド風のところで7000ウォン(約800円)前後といったところだろうか。温泉プールなど設備が充実したところはもっと高くなるようだ。(写真は高級ホテルにある入浴施設の温泉。地下にあって窓はない。入浴料は6000ウォン)


日本と比べると全般的に韓国の物価は安い。ソウルでは地下鉄の最短区間は900ウォン(約100円)、一般的な食堂での一食の平均は6000ウォン(約690円)、映画は6500ウォン(750円)というから、ほかの物価に比べて温泉の入浴料は結構高く感じる。良質の掛け流し温泉が数百円程度で入れることもある日本の温泉のありがたみを海外に来て初めて実感した。

これまでに訪ねた韓国の温泉で気に入っているのは以下のところ。

■五色(オセク)温泉

photo5 韓国の北東部・雪嶽山国立公園内にあり、交通はちょっと不便。アルカリ性単純温泉と炭酸泉の2種類あるが炭酸泉で入浴できるのはグリーンヤードホテルだけ。28度の湯にじっとつかっていると、アワアワが体にまとわりつく。無色透明無味無臭の個性に乏しい温泉が多い韓国にあって、このアワアワ具合には感激。

■東莱(トンネ)温泉

釜山中心部から地下鉄で行けるから便利。大型健康ランドの虚心庁(ホチムション)ほか、温泉を引いたホテル・旅館がある。苦味のある塩辛い湯が特徴。私は泉一温泉という旅館に泊まった。宿泊客は階下の公衆浴場に無料で入れるほか、部屋の風呂も温泉。トイレにも温泉を使っていて、給水タンクが熱くなっていた。

■影島海水湯(ヨンドヘスタン)

photo6 実はここでは温泉ではない。海洋深層水を使った入浴施設で、釜山にある。この海水湯で肌を濡らして普通の固形石鹸をこすりつけたあと手で肌をこすると、あら不思議! 角質がポロポロと取れるのだ。お肌ピカピカ、毛穴スッキリになったのを自分でも実感した。女性には強くおススメする。私も釜山に行ったら再訪必至。

(注)文中の物価は2005年11月25日現在の為替レートで換算。

text by らくだ | 2005.11.29 | [ 世界の温泉紀行 ] | 固定リンク | コメント (2) | トラックバック (0)

2005.11.15

第1回:韓国(1) 温泉マークの不思議

世界の温泉紀行 by らくだ

「えっ、韓国で温泉に入るぅ? あんた、悪いことは言わないからやめときな。ガッカリするよ」。釜山に向かうフェリーの中、お風呂で会った日本語ペラペラのおばちゃんは、シャワーを振り回しながら大きな声で私を諭した。

そうなのだ。私が「韓国で温泉に入るんです」と伝えると、大抵の人は否定的なことを言う。そこまでいかない人も返答に困るらしい。一瞬「…」と言葉を失うのだが、日本をよく知っている韓国人ほど「…」の無言状態が長くなるような気がする。「温泉なら日本の方が絶対にいいよ」とハッキリ言う人もいた。

chuncheon そういえば韓国の街中を歩いていると、「フユノソナタ」とか「ヨンサマ」など怪しげな日本語で話しかけてくる人はいても、「オンセン」または韓国語で「オンチョン」などと近づいてくる人はいない。どうも温泉界は昨今の「韓流ブーム」には縁がないらしい(写真は「冬のソナタ」の舞台にもなった春川駅)。

それでも実際に行ってみなくちゃ、入ってみなくちゃ、本当のところは分からない。そこで、これまでに韓国の18カ所の温泉で入浴してみた。確かに無色透明無味無臭で特徴のない温泉がほとんどなのだが、日韓の入浴文化を比較して初めて気づくこともあれば、「あらま!」と驚くこともあった。

busan 例えば温泉マークひとつとっても、日本とはかなり意味合いが違う。韓国に初めて行った時に街中を歩いていて温泉マークのついた建物が立ち並ぶ一角を見つけた。私ならずとも温泉マニアならウハウハ狂喜乱舞しそうなもんだが、喜ぶのはちょっと早い。

というのも、韓国で温泉マークがついているところは温泉に限らないのだ。サウナ、銭湯はもちろん、旅館やモーテル、日本でいうラブホ風のところにも温泉マークがついている写真は釜山中心部の大通り沿いにある旅館の看板。温泉マークの下に英語で「HOTEL」、ハングルで「旅館」と書いてある。

大手・高級ホテルを別とすれば、あらゆる宿泊施設に温泉マークがついている可能性がある。安宿街なんて、道の両側に温泉マークのある建物ばかりだ。私が見つけたのも安宿街だったのだ。

そして、観光案内所で安宿を紹介してもらって行ってみると、温泉マーク付きの怪しげな宿だったりする。部屋の壁や天井が鏡張りだったり、丸いベッドが置かれていたり…。

motel 写真は江陵(カンヌン)駅前の案内所で紹介してもらった温泉マーク付きのモーテル室内。温泉とはまったく関係ない。観光案内所で紹介してくれるところなんだし、こういうところに泊まるのは韓国では割と普通のことみたいだ。

モーテルのエレベーターの中で小学生らしい子ども2人を連れた夫婦と一緒になった。どこまでも健全な家族旅行といった雰囲気に、なんだかこっちが気恥ずかしかった。

ソウルや東京の韓国観光公社の人に「なぜ温泉マークが温泉と関係ない宿泊施設についているのですか?」と聞いてみたこともあるのだが、これまで由来を知っている人に会ったことはない。

日本でもかつては温泉マークといえばもっと歓楽的かつ妖艶なイメージが強かったと聞いている。韓国ではいまだにそのイメージが残っているのかなぁ(詳しいことをご存知の方がいらしたら是非教えてください)。

yuseong 温泉マークで一番驚いたのは大田(テジョン)近郊にある儒城(ユソン)温泉だ。私が行ったのは2003年の10月。温泉街の中心にある温泉公園の一角に高さ数メートルのクリスマスツリーがあった。

赤い部分はポインセチアの造花だし、下部の台にはメリークリスマスと書いてあるから、これは絶対にクリスマスツリーのはずなのだが、てっぺんに飾られていたのはベツレヘムの星ではなく赤い温泉マーク! 爆笑しながら写真を撮りまくったので、道行く人が気持ち悪そうに私のことを見ていた。たかが温泉マークにここまで感動したのは初めてだ。


このように温泉マークひとつとっても、韓国は十分に楽しめる。次回は韓国で温泉に入る際の実用情報をお届けする予定。

text by らくだ | 2005.11.15 | [ 世界の温泉紀行 ] | 固定リンク | コメント (2) | トラックバック (1)