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2004.12.20
第6回:じゃりン子チエに逢えそうな街で 「和光浴場」大阪下町湯けむり紀行 by 湯けむり天使大阪というワンダーランド 大阪という街に、一般的に抱くイメージは、決して上品なものではなかろう。 大阪人は概して厚顔だというイメージも強い。確かに大阪人は日本に臍が二つあると思っている。東京と大阪と。 以前与党の某大物政治家が、大阪の街を形容して「痰壺」と放言したことがあった。随分と失礼な物言いだが、かなり正確に大阪を見ている。悔しいが、言い得て妙というのが実感なのだ。 だから大阪は厄介か?確かに厄介である。毎日仕事をしていて頭を抱えることがやたら多い。だが頭を抱える一方で、僕はこの街が好きなのだ。こんな面白い街はない。こんなにわくわくする街はない。そして、こんなに解放感が得られる街はない。 最終回、大阪の街の印象を述べたのは、温泉銭湯紹介を通じて大阪の街の魅力を知ってもらいたいがためもある。今やほとんど目にすることのなくなった、裸の庶民の存在を知ってもらいたいがため。 ブランド物の服など着ることもなく下駄履きで遊び、塾になど行くこともなく家の手伝いをするような、昔は普通に見られたじゃりン子チエのような子供を、今やほとんど目にすることがなくなった。だが、決して絶滅したわけではなく、大阪の下町に残存している。今回はそんな街にある銭湯を紹介することにして、大阪下町湯けむり紀行を終えることにしよう。 庶民的な、あまりに庶民的な・・・ 浪花のシンボル通天閣がある新世界。大阪で最も庶民的といえる歓楽街だ。今でこそ「スパ・ワールド」など若者や家族連れが集まる施設が建設されたために、客層も変化したが、少し前までは、おっさんしか歩いていない街だった。
ここは天国 ここは天国釜ヶ崎 とのフレーズで、知る人ぞ知るご当地ソング、路上で何人もの人が凍死し、白昼堂々と覚醒剤が売られ、ヤクザのベンツが労働者を蹴散らすこの地は地獄そのもので、何が天国か?
さて、和光浴場の紹介である。 それでは早速お邪魔してみよう。 この銭湯の造りはノスタルジーを感じる類ではなく、近代的なものである。番台が備え付けられているが、券売機で入浴権を購入するシステムだ。 さらに、どこまでも続くカランに沿って通路を進むと、正面にスチームサウナ、その横にはプール並みの大きな浴槽がある。純銀イオン風呂との表示があるその浴槽も、人口炭酸泉で満たされているのであるが、純銀イオン風呂なる怪し気な風呂の内容はというと、一言でいえば、湯を清潔に洗浄するシステムの一種らしい。 純銀イオン風呂の右隣は乾式サウナ、その前には大きな水風呂。ここの水風呂の冷たさは大阪随一かもしれない。水の表面近くに靄がかかるほどである。ここまで冷たいと、もう我慢大会だ。
この地の銭湯の脱衣場には、必ず洗濯機と乾燥機が付属しているという特徴がある。 この銭湯は、一種のサロンとでもいうべきもので、おっさん達は充実した銭湯で癒され、脱衣場のベンチで休息、実に快適そうだ。それにつけても、男湯は何時来ても満員、女湯は聞いたところによると、閑散としている時間帯が多いらしい。土地柄というべきか。 和光浴場は充実した銭湯で、銭湯マニアの間では非常に評価が高い。西成にはすこぶる沢山の銭湯があるが、間違いなくここが最高といえよう。下町のオアシスといって過言でない。 和光浴場前の路地は、ほとんどじゃりン子チエの舞台となった下町の雰囲気と寸分違わない。飾り気のない小さな商店がの軒を連ねており、風呂上りにビールを飲みくつろぐおっさん達の姿が目につく。こんなささやかな幸福がたまらない。
銭湯のるつぼ、西成の地には他の地域にはない個性的な銭湯がある。二つばかり紹介しよう。 堺筋に面して立っている今池湯は、自称「超広いお風呂屋さん」。確かに妙に横方向に広い。それもそのはず、ここは男湯と女湯の壁を取り払ってしまっているからだ。かといって混浴ではない。ここは女人禁制、男湯のみの銭湯なのである。女湯と表示されている入口を入っても、中には男しかいないので、妙な気分になる。 もうひとつは、西成区太子にある明治温泉 このような銭湯、僕は西成の地以外で目にしたことがない。まさしくワンダーランドである。
大阪の下町にある温泉銭湯紹介を通じて、大阪の各地を紹介してきた。ガイドブックに載っている大阪のイメージとは少々異なるかもしれない。ガイドブックに載っている大阪は、大半が小奇麗な観光施設のみで、大阪らしさがない。小奇麗な観光施設など、倉敷などに任せておけばよろしい。大阪の魅力はもっと他にある。 最後に、随分ローカルな話題に付き合って読んで下さった方々に感謝します。 text by 湯けむり天使 | 2004.12.20 | [ 大阪下町湯けむり紀行 ] | 固定リンク | コメント (3) | トラックバック (1) 2004.12.07第5回:下町の奇跡と昭和ノスタルジー 「トキワ温泉」大阪下町湯けむり紀行 by 湯けむり天使チンチン電車の走る町 大阪では阪堺電気軌道という路面電車が走る。大阪市の南部から堺市にかけて、所謂大阪の下町をのんびりと走るチンチン電車は、子供の頃、よく乗ったこともあって、随分とノスタルジーをかきたてられる。 チンチン電車は急がないからよい。信号はあるし、駅が多いのですぐに停車、自動車はどんどん追い越してゆくが、悠然としたものだ。このせわしなきご時勢に、こんなに悠然と走る電車が、道路の真ん中を占領しているのが妙に愉快でならない。急ぐばかりが能ではない。 今回紹介する「トキワ温泉」も、そのチンチン電車の走る町に、キラ星のごとく存在する宝物の中のひとつである。 ごく普通の銭湯の外観と思いきや・・・ 阪堺線の神明町駅から徒歩すぐの場所に、トキワ温泉はある。ここは大阪府堺市、大阪市と隣接したベットタウンであり、工場地帯でもあり、大阪市南部から続く、下町風情を残す地域でもある。 さて、それは何でしょう? 別段クイズをやるつもりはなく、即座に答えを出してしまうが、正解は銭湯の象徴ともいえる煙突がないところ。 それでは早速、お邪魔してみよう。 昭和のノスタルジー・昔懐かしき番台の風景 入口脇に設置されている看板を目にしながらのれんをくぐると、正面に券売機が、あれま、意外に近代的と思いきや、入口の戸をあけると一気に昭和のノスタルジー、昔懐かしき日本の銭湯がそこにある。 かつて銭湯といえば、番台がつきものだった。 この銭湯の脱衣場の造作と付属品は、まるでタイムスリップしたかのような気分にさせてくれる。年季が入って黒光りしている木質の番台、同様の木材が使用された男女の仕切り板にはめ込まれた宣伝文句付き鏡、天井にある二枚羽根の煤けた扇風機、3分間20円の旧式ドライヤー等々・・・・ 驚異的な大量源泉かけ流し 懐古趣味にばかり走っている場合ではない。トキワ温泉の魅力は昭和ノスタルジーばかりではなく、最大の魅力は、何といっても天然温泉、それも豪快な源泉かけ流しという驚異的大判振る舞いにある。 ここは元々、ごく普通の銭湯であったが、8年前に温泉を見事に掘り当て、天然温泉トキワとしてリニュアルオープンした由、大枚をはたいて温泉掘削に挑んだオーナー氏の心意気を買いたい。 個性的な三段浴槽と天然温泉カラン 浴室は広くはないが、浴槽類は合理的に配置されている。サウナが脱衣場にまではみ出した造作になっているのは、後年建て増ししたなごりだろう。入口付近に水風呂、奥には個性的な三段式の主浴槽、その横にはジェット、ジャグジー類の機能バスが設置され、水風呂を除く全ての浴槽に源泉がかけ流されている。 なんといっても目を引くのは上・中・下と順番に湯が下る仕掛けになっている三段式主浴槽だ。上段浴槽の上の三角形の注ぎ口から源泉が豊富に注がれ、手を触れてみるとかなり熱い。45度ぐらいありそうな感覚だ。下の段に下りるほど湯温は下がるが、それでも42度~43度ほどはあるような結構熱い湯である。施設側の説明では上段から順に43度、42度、41度となるらしいが、体感温度は、もっと高いような感じがする。 三段とは言え、上段は事実上湯溜めで、人が入れるほど広くない。中段と下段に、好みの湯温に応じて入浴することになるが、熱い湯の苦手な僕は、下段の浅い部分に、額に汗しながら浸かり、時折水風呂で身体を冷やしつつ入浴を重ねるばかりであったが。 天然温泉目当てで、遠隔地からわざわざ出向いてくる僕のような酔狂な人間もいるが、利用者の大半は地元の人とおぼしき中高年、銭湯がすっかり社交の場となっている。熱くなれば、浴槽の淵に腰掛けよもやま話、庶民の実態を知りたければ下町の銭湯へ行けばよい。係数では現れてこない庶民の本音が聞けるだろう。 やや黄色がかったほぼ透明の湯は、大量にかけ流され、湯船からオーバーフローしているためすこぶる清明で、単純泉ではあるがかすかに硫黄臭のする結構なものである。贅沢な湯の使い方だ。これほど贅沢に湯を使用して360円の銭湯料金で済むのだから、感謝感激、随分得をした気分になる。 ここの湯は、僕にはかなり熱く感じるのだが、それでも「今日はぬるい」という常連客がいる。夏場に利用したため、熱いのは少々苦痛であったが、冬場は身体が温まって最高だろう。慣れれば癖になりそうな湯である。 また、ここではカランから出る湯も天然温泉であることを記しておかねばならない。温泉地並みの潤沢な湯の使い方で、これまた感謝感激だ。煙突のない銭湯であると書いたが、湯を沸かす必要のないこの銭湯では、湯はすべて天然温泉なのである。 由緒正しき富士山の壁画も かつて、銭湯壁画といえば、タイル地に描かれた富士山が定番であった。関西人である僕は、東京の銭湯壁画の傾向はよく知らないのだが、場所柄やはり富士山が主流ではないかと思う。そのような由緒正しき銭湯壁画が、トキワ温泉には存在する。 銭湯の壁画を眺めるのは愉しいものだ。湯舟に身を沈めながら、壁画を見るのが僕の少年時代からの性癖で、幼少時に見た銭湯の壁画は今でも鮮明に思い出すことができる。森と湖と水車小屋の風景は、僕にとっての桃源郷の原型となっている。 下町の奇跡を支える庶民 住宅地のど真ん中に、24時間源泉を豊富にかけ流した温泉銭湯がある奇跡、ガイドブックにもほとんど登場しない、一種の大阪の‘秘湯‘とも言うべきトキワ温泉、ここは、熱心な常連客によって支えられている。 取材を終えて脱衣場から外に出た際に、待ち構えていた常連客から、口々に言われた。 「ここは、ほんまにええ湯やで」 水道料も馬鹿にならず、ポンプの補修をすれば150万円、ボイラーなら300万円もかかるこの業界、維持するのは並大抵ではなく、この下町の奇跡を支えるのは常連客の庶民以外にない。トキワ温泉で癒された庶民が、一方ではトキワ温泉を支える。 庶民に愛されるトキワ温泉、常連客の生の声を聞きながら、僕もこのような銭湯を愛し続けますよと、こっそり力こぶを入れながら帰還した次第であった。 text by 湯けむり天使 | 2004.12.07 | [ 大阪下町湯けむり紀行 ] | 固定リンク | コメント (3) | トラックバック (0) 2004.11.22第4回:ぬる湯の源泉風呂は極楽至極 「志宜野華厳温泉」大阪下町湯けむり紀行 by 湯けむり天使大阪は銭湯のるつぼ 大阪府には一体公衆浴場がいくつあるのだろうか。これは数年前のデータであるが、浴場組合傘下の銭湯だけで、1,390店に及ぶらしい。東京都が1,273店とのことで、人口比も考慮に入れると、大阪府の健闘が目立つ。1,390店のうち、大阪市内が697店で、約半数が市内に集中していることになる。大阪市の銭湯密集度合いたるや、日本一かもしれない。 銭湯は新興住宅地にはない。古くからある人口密集地である都会の下町に集中しており、即ち庶民が銭湯を必要としていたということ。尤も、最近は家風呂の充実と、スーパー銭湯の攻勢で町の銭湯は苦戦を強いられており、廃業に至る銭湯が目立つのは実に寂しいことである。 ところで、他店との差別化で、最も有効なのはやはり天然温泉だろう。スーパー銭湯では天然温泉は当たり前となっているが、通常の銭湯で湯船を天然温泉で満たせるというのは、かなり優位に立てる条件だ。そのためには多額の掘削費用を要するのだが・・・・ 住宅地に忽然と現れる建物 華厳温泉は大阪市城東区の住宅街に位置しており、JR学研都市線鴫野駅から徒歩5分といった位置にある。建造物は会社の事務所もしくは公民館といった趣で、温泉の風情とは遠い。規模も大きなものではなく、個性的な建物でもないが、住宅街には奇をてらう建物はむしろ不釣合いで、これでよいのだろう。 それではさっそくお邪魔してみよう。 靴を脱ぎ、カウンターの反対側にある券売機で入浴券を購入し、カウンターへ持参するシステム、狭いながらもベンチと自動販売機コーナーがあり、待合いも可能である。狭い空間を合理的に利用している。
ここの浴槽は随分と個性的だ。ガラスドをあけて浴室内に足を踏み入れると、長大な主浴槽に圧倒される。
主浴槽の奥には電気風呂と水風呂が連なる。ここにはサウナの類はないのに何故水風呂が?と疑問に思う人は、風呂の快楽に目覚めていない人なのだろう。サウナで汗をかいて、その後冷たい水風呂にドボンというのが典型的な水風呂利用法だろうが、サウナでなくとも、湯に浸かり少々長湯すれば体温は上昇し、汗もかく、一度水風呂に入ればまた湯に入りたくなる。ましてやここは天然温泉なのである。カラスの行水では勿体無い。長風呂派の僕には、水風呂の存在はすこぶる有難い。
内湯の横に露天風呂への入口がある。この銭湯は、脱衣場といい、浴室といい、浴槽といい、全ての面で縦長のレイアウトであり、露天風呂も同様で、縦長というよりむしろ、鰻の寝床である。 この源泉浴槽は源泉のかけ流しであり、湯が浴槽の手前の淵からオーバーフロー、パイプから浴槽に注がれる湯を口に含んでみると、ナトリウム-塩化物温泉と表示されているが塩味はほとんどなく、僅かに金気がする。香りは金気臭とほのかな硫化水素臭で、あまり癖のないものである。 なお、飲泉は不可の模様。源泉注ぎ口に、「飲用されても一切責任は負いません」との手書き文字が表示されているのはご愛嬌。このように書いておかないと、源泉だから大丈夫と飲んでしまう輩が沢山いるのだろう。
幅が狭い浴槽であるので、脚をのばすと反対側の淵にかかる。頭を淵に預けて足を反対側の淵にかけると、まことに至福のポーズとなる。湯が40度もないぬる湯であるのがこれまた好都合で、長湯には最適の環境だ。 愉快なのは、至福のポーズで入浴中、空を見上げていると、頻繁に飛行機が見えること。ここは大阪空港の着陸経路の真下に位置するため、うまい具合に真上に飛行機を目にすることになる。伊丹市で育った僕は、散々飛行機の騒音に悩まされてきたが、ここで見る飛行機は優雅なものだ。
大阪市内の温泉銭湯のうち、最も湯治場の雰囲気を醸し出しているのがこの志宜野華厳温泉だと思う。ここは最近の銭湯に充実しているジェットやジャグジーの類の機能バスやサウナなどを売りにしておらず(主浴槽の奥に2連のジェットとジャグジーがささやかに付属しているのみ)、簡素で合理的な浴槽があるばかりだ。この飾り気のない浴槽に、源泉がかけ流されており、温泉の湯を堪能するには必要かつ充分である。それどころか、大阪という大都会に、こんな鄙びた湯治場のような温泉があるということ自体、信じられない思いがする。 温泉に求めるものは人それぞれ、機能満載のスーパー銭湯を好む人もいるだろうし、高級旅館での豪華絢爛お食事付き温泉ばかり利用する人もいるだろう。けれども塩素臭が鼻につき始めると、スーパー銭湯からはどうしても足が遠のくし、高級旅館へは滅多に行けるものではない。 どうかこの華厳温泉においては、将来リニュアルの際にも、源泉かけ流しにこだわった施設のままにしてもらいたいと切に願う。利用者の勝手気儘な希望に過ぎないのだが・・・・ text by 湯けむり天使 | 2004.11.22 | [ 大阪下町湯けむり紀行 ] | 固定リンク | コメント (3) | トラックバック (0) 2004.11.09第3回:会社帰りに良質の湯を堪能 「天然温泉田辺」大阪下町湯けむり紀行 by 湯けむり天使下町は銭湯の宝庫 このコラムで僕が紹介しているのは、大阪という都会地にある天然温泉が湧く銭湯である。東京とは比較にならないが、大阪といえど大都会に違いなく、けっこう広いものなのだ。都心部から場末の地まで、言い換えるなら、背広ネクタイ族やハイヒールを履いたOLが闊歩する北浜や淀屋橋のビジネス街、若い男女が着飾って集う心斎橋のアメリカ村、また、冬になると何人もの浮浪者が路上で凍死する西成の釜ヶ崎など、大阪は様々な顔を持つ。そして、それぞれの地に個性的な銭湯があるのが興味深いところ。 今回紹介しようとする「天然温泉田辺」もやはり下町にあるといってよいだろう。 アクセス抜群の立地条件 「天然温泉田辺」は、大阪市東住吉区に位置する。前月に紹介した「ふれ愛温泉矢田」も東住吉区なのだが、距離は相当離れており、客層もかなり異なる。こちらは下町とは申せ、立地条件の優位さから地元民のみならず、ビジネスマンの利用者も結構目立つのである。 目を引く近代的建造物 下町にある銭湯とはいえ、通常の銭湯の雰囲気とは異なり、スーパー銭湯に近い偉容の建造物だ。清潔感あふれる近代的建造物の地下には駐車場もあり、車でのアクセスも可能。ただ、駐車料金有料(200円)には少々不満を覚える。 それでは早速お邪魔してみよう。 正面に誇らしげに設置されているにラドン発生装置を目にしながら、暖簾をくぐるのではなく、自動ドアを開けて入場。入場するなり下駄箱の数の多さに圧倒される。総数367個、そのかなりの部分が使用中である場合が多いのにも驚くが、アクセス抜群・設備満載・更に銭湯料金で天然温泉であるならば人気があるのも当然で、そりゃそれだけの数も必要だろう。それにつけても明るい玄関で、心地好い。 さて、ここの料金体系は大阪府の銭湯料金の360円には違いないのだが、様々なオプションがある。240円余分に支払うことでサウナ付き源泉露天風呂に入浴できる600円のコースがあり、これがまた良質の天然温泉を堪能でき、実にもって捨てがたいのだ。 採光性抜群の明るい浴室
温泉を掘削し、現在の建物で「天然温泉田辺」となったのが平成3年であるから、既に13年の歳月が経過しているにもかかわらず、外部・内部とも全く老朽化の兆しが見られないのには感心させられる。特に、清潔感あふれる浴室内には好感が持てる。
奥に進むと、半地下ともいうべきエリアがあり、ここは機能バスの集積地。向かって右から水風呂、スチームサウナ、ラドンバス、打たせ湯と続く。何でも揃う機能満載の銭湯だ。 濃厚な源泉かけ流し露天風呂 二階に上がると、ここは所謂ロイヤルゾーン、600円でサウナと源泉露天風呂を堪能できるエリアだ。 この露天風呂の湯は良質である。注ぎ口から湯船に注がれる湯は豊富で、源泉は54度と高温だが利用温度は42度くらいだろうか。やや熱めに感じられるが、すぐ横に立派な水風呂があるのがこれまた有難いもので、火照った身体を時折冷ましながら何度も源泉の湯に浸かるのは、快適の一語に尽きる。
ナトリウム-塩化物温泉は塩味に加え、若干の苦味を有し、香りがまた結構なものである。温泉に入り慣れてくると、肌と鼻が妙に肥えてきて、肌触りと香りを味わう癖がつくものだ。注ぎ口に付着する茶色の析出物が豊富な鉄分を示し、事実、金気臭のみならず僅かに硫化水素臭も合わさった香ばしい匂いは、だし汁のような、僕の感覚では一種カツオだしの風味にも似たもので、大阪のど真ん中でこのような泉質の湯に浸かる幸福をしみじみと味わうことができる。 身近な駅前温泉の魅力 僕のようにカネ・ヒマの不足した温泉好きにはこの「天然温泉田辺」、まことに有難き存在で、勤め帰りのみならず、休日にも足を伸ばすことがある。自宅付近にスーパー銭湯はあるが、例外なく塩素混入循環温泉ばかりで、近頃とみに泉質にうるさくなったこの身には、ここの湯のように、だし汁の風味が香るような、天然温泉を実感させてくれる湯にどうしても惹かれるからだ。 スーパー銭湯並みの機能を有し、なおかつ優れた泉質の温泉を有する「天然温泉田辺」、その明るく洗練された雰囲気は前回紹介した「テルメ龍宮」の浪花節的雰囲気とは明らかに異なる。また、雰囲気がそれぞれ異なるから愉快なのである。 text by 湯けむり天使 | 2004.11.09 | [ 大阪下町湯けむり紀行 ] | 固定リンク | コメント (5) | トラックバック (0) 2004.10.14第2回:都会のパラダイス 「天然温泉テルメ龍宮」大阪下町湯けむり紀行 by 湯けむり天使安治川のほとり今昔 宮本輝原作の「泥の河」という小説がある。映画化もされたのでご存知の方もおられると思うが、昭和30年代、川沿いの食堂に住む少年と、廓船に住んで川を行き来する少年との交流を描いたもので、胸塞がれる印象的な小説である。当時日本はまだ貧しかった。舞台となった安治川はその後、高度成長のあおりをまともに受け、文字通り泥の河となってゆく。 安治川の東側は大阪市港区、様々な近代的施設が建設されているとはいうものの、今でも下町の雰囲気を濃厚に残す地域である。今回紹介する「テルメ龍宮」も、そんな下町に位置する。やはり銭湯は下町が似合う。 目を引くパラダイス風建造物 地下鉄中央線朝潮橋駅から徒歩15分、国道172号線から東に入ってすぐに、大きな建物が目にとまり、普通の町の銭湯より一回り大きな威容を示す。伝統的な銭湯の風情とは異なり、そこはかとなく妖しげな雰囲気、下手すれば場末のファッションホテルに見えなくもないが、屋号と相俟って、龍宮城を想起できなくもない。それにつけても、屋根のてっぺんに温泉マークとは随分と個性的で、入場前から胸躍るというもの。 それでは早速お邪魔してみよう。 番台方式ではなく、券売機で入浴券を購入し、カウンターで手渡す近代的システム。カウンターの手前に階段があって二階に通じており、上がってみると、休憩所兼食堂のスペース、常連客がひっきりなしにカラオケをがなる光景を目にすることになる。二階部分は広く、休息場所とは別に、ふすまが閉められた小部屋もあり、小宴会なら可能なスペースだ。これは有料の個室休憩所であるらしい。天然温泉が湧く「テルメ龍宮」で宴会というのも、一興でありますぞ。 風呂あがりにビールでも飲み、カラオケもといった生活様式が板に付いている年配の常連客の姿を見ると、この人達にとって、ここは良い憩いの場なんだろうなと思う。先に紹介した「ふれ愛温泉矢田」も、優れて庶民の憩いの場であるが、ここは「探偵ナイトスクープ」の桂小枝探偵が面白おかしく紹介するような、一体これから何が出てくるのかハラハラドキドキのパラダイスに近い。どちらも大阪的で、甲乙つけ難い。 個性的機能てんこ盛りの設備群 脱衣場は平均的な広さであるが、浴室はさすがに広い。広いだけでなく、設備の多様さに圧倒される。 ここで、心遣いが嬉しい特徴的な設備を紹介しておこう。 脱衣場に、浴室に面して37インチ大画面のテレビが設置され、浴室内から見ることができる。主浴槽に浸かったまま客が一斉に脱衣場の方を向いている奇観が見られるのはそのためである。日本シリーズやワールドカップの佳境の場面なら、さぞかし壮観だろうなと想像すると愉快になる。 また、スチームサンソ室なる設備も目を引く。これは通常のスチームサウナより酸素の量を増量して呼吸しやすくしたオーナー氏の心遣いらしい。酸素を増量すると健康増進に役立つのかどうか、正直言って少々怪しいのだが、ここは宣伝を信じておこう。曜日によって香りが異なるというのも細やかな心配りである。 写真で見えるカランに注目して欲しい。通常の銭湯は冷温(青)と高温(赤)の二つがあるだけだろう。ところがここは三つ、適温・冷温・高温とあり、適温のカラン一つで給湯できるよう工夫されている。それなら適温のカラン一つだけあれば充分ではないかと突っ込みを入れたくなるが、余計な突っ込みはやめて、ここはその気配り心配りを感謝しておこう。 注目の露天風呂B級壁画 うなぎの寝床の如き小さな露天エリアが付属し、そこには天然温泉浴槽と、バスクリン風呂なる一人用の極めて小さな浴槽が一つある。隣に天然温泉浴槽があるのに、わざわざ貧弱なバスクリン風呂に入るような酔狂な御仁など・・・・それが居るのである。見ていると、気持ちよさそうに入浴している老人がちゃんと居るから世の中わからない。 露天エリアでの注目は、何と言っても、オーナー氏の親戚筋にあたる絵心のあるお方がお描きになった壁画だろう。 なんと地下室もあるでよ 脱衣所から地下に降りる階段があり、降りていくとなんと地下にも浴槽が・・・しかも結構広い。白湯のジェットのみならず天然温泉浴槽もジェットという大サービス、大きな水風呂もあり、テレビまで見ることができる。これでもかという、めまいしそうなほどの機能満載・サービス満点振り、恐れいりました。 しかし、ここの目玉はやっぱり天然温泉、地下室入口に源泉の飲泉所があり、飲んでみると強度の塩味と激しい金気臭、地下1500mから汲み上げた53・9度のナトリウム塩化物強温泉の源泉は強い印象を残した。食塩泉は所謂”熱の湯”、冬場はすこぶる身体が暖まることだろう。この温泉の泉質だけをとってみても、「テルメ龍宮」、ただものではない。キワモノではなく、正真正銘のパラダイスだ。 この素晴らしき大人の遊園地 このコラムを書くについて、オーナー氏のご子息にお話を伺った。銭湯経営の苦労話から業界の内幕まで。お話を聞いて、また入浴してみて感じることは、熱意が無ければ到底維持できないということ。設備一つ一つを見ても、オーナー氏の強い熱意とこだわりがひしひしと感じられ、事実、大阪では最も個性的な銭湯の一つとなっている。他店との差別化を図るため天然温泉掘削に挑む冒険的姿勢など、敬意に値する。 text by 湯けむり天使 | 2004.10.14 | [ 大阪下町湯けむり紀行 ] | 固定リンク | コメント (5) | トラックバック (0) 2004.09.25第1回:庶民の桃源郷 「ふれ愛温泉矢田」大阪下町湯けむり紀行 by 湯けむり天使湯けむりを目にするたび、胸の鼓動が高まり身も心もとろける感覚に陥ってどうにもなりませぬ。 大阪温泉銭湯めぐり さて、なぜ大阪温泉銭湯めぐりであるか? 僕は秘湯好きである。されど、自然の懐に抱かれた山の湯に浸かってみたい衝動に駆られながらも、やはり現実を考える。社会人として、二児の父として。長期休暇など取れば、会社にある僕の机はなくなるだろうし、家族からは何と酔狂な親父かと白眼視されること必定だろう。 このシリーズで紹介する温泉銭湯は大阪市内にあって、天然温泉が湧く素晴らしい銭湯ばかりである。ただしスーパー銭湯は除外している。スーパー銭湯の中には優れたものもあるが、その大部分が、大きな浴槽に満たすだけの湯量が不足するため加水・循環・塩素風呂化しており、僕の嗜好に合わないからだ。 煙突と赤いのぼりが目印 今回紹介するのは、大阪市東住吉区にある「ふれ愛温泉矢田」。矢田生活協同組合が運営する温泉銭湯である。昭和63年に温泉を掘り当てて以来、朝6時から深夜12時まで、年中無休で営業を続けており、その勤勉な営業姿勢には敬服させられる。 それでは早速お邪魔してみよう。 大きなのれんをくぐるとすぐに、券売機が目に入る。下足箱に靴を入れ、扉をあけるとカウンターがあり、入場券を渡すシステム。扉の前には手書きの温泉分析書が堂々と飾られ、天然温泉をアピール、この手書きの分析書、実に貫禄があってよござんすねえ。 館内に流れる演歌とムード歌謡 脱衣場でも、浴室でも、途切れることなく演歌やムード歌謡が鳴り響く。客筋も建物の雰囲気も見事に演歌調で統一されており、どう見てもクラシックやポップスは不釣合いだろう。僕は演歌が好きではないが、ここではやはり演歌が似つかわしいと思う。 脱衣場の広さは普通の銭湯並みであるが、銭湯並みでないのが、浴室への入口にある飲泉所。蛇口をひねって温泉を出すなどというケチ臭い了見ではなく、ライオン口から絶え間なく天然温泉がドバドバ流れ出ており、横の冷水器と相俟って、サービス満点。湯量がかなり豊富と見た。 飲んでみると、若干の金気臭を感じるものの、塩味はほとんどなし、癖がなく飲み易い温泉である。ペットボトル二本までは持ち帰り自由というのは、温泉は生き物で生鮮食料品であるという施設側の認識からであろう。大きなペットボトルを袋に入れて持ち帰る人の姿が目につく。 源泉かけ流しの内湯と露天風呂 浴室の戸を開けると主浴槽が、長靴を逆さにしたような形で鎮座し、真ん中からの注ぎ口から湯がふんだんに注がれオーバーフロー、まことに贅沢な気分にさせられる。奥の長靴の底の広い部分にはジャグジーとジェット、源泉かけ流し湯のジャグジーであり、白湯のそれとは値打ちが違いますぞ。手前の足首の位置が浅深の深い部分にあたるが、深いとは申せ、座って肩までの位置、この主浴槽はゆっくりと座ってくつろぐ設計だ。湯温も絶妙で、ついつい長湯と相成る。 露天風呂は7人~8人程度入れる規模のもので、ここも当然源泉かけ流し、岩の隙間から天然温泉が注がれ、温泉気分上々である。ただし、露天でありながらも、学校の中庭のような雰囲気で、見えるのは壁と空ばかりなのは都会地にあるがゆえの限界か。 入浴客は浴槽の淵に腰を下ろし、実に満足げな表情を見せている。そんな姿を見るだけで愉快になる。 毎分470ℓの湧出量を誇るこのナトリウムーカルシウム・塩化物温泉の湯は、ほとんど無色ながら、僅かに黄色ないし鶯色とおぼしき色合いで、入浴するとほのかに香る硫黄臭がこれまた結構なものである。よく温まる湯らしく、湯あたりに注意との注意書きがあった。 懐かしき日本の銭湯 大阪市内で天然温泉の恩恵に浴し、しかも360円の銭湯料金、毎日千人前後の来客があるのもうなずける。深夜に浴槽の湯を全て抜き、新たな湯を注ぐのが日課であるらしく、入浴客に毎日新鮮な湯に入ってもらおうとするその良心的姿勢には、頭が下がる思いである。 text by 湯けむり天使 | 2004.09.25 | [ 大阪下町湯けむり紀行 ] | 固定リンク | コメント (5) | トラックバック (1) |






