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ココログ: blogサービス



コラム
おフログ

2005.03.23

第6回:戦争と平和

誰も入りたがらない伝説の秘湯 by 神野槌火児

はじめは鳴子温泉の宣伝にもなればと思い始めたコラムだった。

温泉問題に揉めた時期も堂々としたものだったが、東北の田舎者はアピールをするわけでもなく、ただ都会から届く「おたくは大丈夫なんでしょうね?」という疑惑に怯えながら答える毎日だった。

この町の人は、どこか諦めていて直接金銭に基づかないような取材は、かなり断られた。
鳴子町が発展すれば、この町の景気も良くなるのではないか?
その疑問に一人の男性は答えてくれた。

「鳴子町が目指す発展は都会化することじゃないんだよ。」

なるほど。人口が密集すれば単純に店舗などを利用する人も増える。しかし、人口密集によるモラルの減少や心的疲労も付随してくる。

「それに、鳴子町はもう無くなるからね。」

こん平師匠の故郷と同じく、鳴子町も合併の波に呑まれる運命だった。
新しく生まれる市の名前は「大崎市」と決定しているらしい。それについて、高校生がこんな事を言っていた。

「大崎って名前、本当に嫌です。事なかれ主義の大人が決めた伸展しなさそうな名前。それに大崎って、未だに昭和のヤンキーがたむろってる場所ですよ。何か陰気くさいし、馬鹿が集まっているみたいで最悪。」

思春期真っ盛りで歯に衣着せぬコメントに好感を持った私は、迂闊にも、何で政府は合併をさせるんでしょうね、と訊いてしまった。

「データベースにしやすいからでしょ。それと裁判官制度ってのも気に喰わない。何か提出した戸籍通りに住んでいるのか確かめるためにやるみたいで・・・。じゃ、何でそこまで戸籍の確認をするかというと徴兵するためでしょ。アメリカが北朝鮮に攻撃なんてことになったら、日本もイラクの時みたいに後方支援なんて言ってられないからだ!そんな事なったら絶対子供なんか産まない!本当に政治家ムカツク!公民とか習わせても現実は違うし、三権分立とか言っても力偏ってるし、世界に誇れる憲法だとか言っといて改変しようとしてるし。だいたい投票率が半数きってるなら、該当者なしだろうが!・・・。」

彼女の怒りはしばらく止まらなかった。

同じような事を思っている中高生も日本には多くいるのだろう。往々にして学生の意見は認められず、趣味がゲームやアニメと言えば大人は殺人鬼でも見るような目を一瞬みせる。過剰で潔癖なルールと施行している大人の汚れとの間でストレスを感じるのは当然だろう。

殺人もテロもやってはいけない。社会を変えたいなら効率的ではないし、馬鹿な大人のプロパガンダにされるだけだから。本当に壊すべきモノは他にある。


さて東京に乱立する温泉についても、こんな話が聞けた。

「あんなに馬鹿みたいに汲み上げて大丈夫なのかや。」

はい?

「昔、どこだかの国でエビの養殖するために地下水汲み上げていたら地盤沈下したって聞いたことあってや。東京はセメント(地面)だから水吸わないべ、おっかねえなや。」

このお爺は、娘が東京に住んでるので心配しているようだ。耐震のマンションだろうが、底から抜けてしまったらポキリでしょうね・・・と面と向かって言えず、よくお調べになった方が良いと思いますとコメントするだけに留まった。
実際、天然ガスに引火してしまったケースもあり、イメージだけで言ったら不安だ。


今回は不安を煽るようなコメントが多かったが、実際に不安になっている人もいるのが事実だし、明確な答えも分からないのが事実だったりする。後は該当者が個人的に調べてほしい。真実はそこにある。


前回のつづきとオチ

結局、最終回になってしまったが・・・ついに秘湯の温泉がホースを通して私の左手に注がれる。
なるほど、幾多の芸能人が挑み敗れていった温泉とは、こういう事だったのですね・・・。

「ね、ぬるいでしょ?」

冬で雪が積もり、ホースを通しているために温いのではなく、夏でも似たような温度だと言う。

でも、テレビでお父様は毎日入っていると仰っていましたが・・・。

「あれはウソだよ。田舎者がテレビでテンション上がり過ぎてしまった時に出る・・・ウソさ。」

(ここで、あがた森魚か山崎ハコの歌を流してください。)

藤岡弘探検隊だって、最後までウソとは言わないぞ・・・。

この温泉は夏の数日間のみ辛うじて入れるとの事。テレビで温泉番組が増えるのは当然冬・・・そりゃ、誰も入らないだろうな。

心の中でこの温泉を「リアクション芸人殺しの湯」と名づけ、雪の舞う鳴子温泉を後にした。キンキンに冷えた左手を暖めながら。

幸せって何だろう・・・。

text by 神野槌火児 | 2005.03.23 | [ 誰も入りたがらない伝説の秘湯 ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.03.08

第5回:骸

誰も入りたがらない伝説の秘湯 by 神野槌火児

抜粋

夢を見たけりゃ、TDLにでも行ってくださいよ。
あそこはお金で他人と非現実を共有できる半宗教的空間ですから、何も考えずに楽しめるでしょうけど。
でも、同じものを温泉に求められてもねえ・・・。

現実逃避でしょ、結局

自分の選んだ仕事で苦痛を覚え、それを忘却する事が「癒し」だなんて・・・。
戦争もテロも止められず、環境が破壊されていく様子を背中に感じながらも「目先のお金」がないと生活できないから働くしかない。で、疲れたら温泉だって。

将来、とばっちりで死んでいく子供たちは「今まさに現代を生きる大人」を呪うんでしょうなあ。

今、目の前にいる男はあの珍湯の製作者の家族だ。

前回に脳梗塞で入院した製作者は、ほんの二週間で退院し今は日常生活を辛うじて送っている。
当然、温泉の話を聞いている場合ではなく第一回から振っていたネタも答えを出す前に破錠しているのが現状だ。
製作者に話を聞いてこそオチるというものだった。

それでもご家族の方に気を使っていただき、ある程度の情報を知っている彼が質問に答えてくれる事になった。
でも、本当は逃げ出したかった。
脳梗塞の話が出始めた頃から、例え口に出さなくとも「死」の雰囲気が漂いはじめ、スケジュール消化のために深夜徘徊をして書いた妖怪ネタも暗い気持ちが根底に残り、書いてて厭だった。
読まされる方は意味を分からず、もっと嫌だったろうが・・・。

このコラムを書く許可を以前もらいに行った時、「コラムが載れば鳴子温泉の宣伝になるし、ウチの店も儲かるかも知れないなあ。」と呑気に対応してくれた彼だったが、相談の結果くわしい住所などは載せない事に決めた。

「父が勝手に作った温泉だから、もし父が亡くなったら解体します。それにあの温泉はテレビで紹介されようと、道から丸見えだろうと、結局は家風呂だから・・・お金になるわけじゃないし、他人に奉仕してるほど余裕のある家じゃないし・・・。」

借金も多く、いつ家族全員で自殺してもオカシクナイ状態だと彼は言った。

「ま、自殺して小泉に無視されるのもアレだしな・・・。」

死。
何と返して良いか分からない。
握っている紙に、どうしてこの温泉を作ったのですかと書いてある。今となっては、くだらない質問だ。

「よく、ヨーロッパとかで妻か子供を亡くした貴族が庭に気持ち悪い建造物つくったりしてるでしょ。あれと根本は同じですよ。本当は僕に兄がいたんです。でも赤ちゃんの頃に死んでしまって・・・。今思えば、その時にこの家は崩壊していたのかもしれないですね。父は子供さえ作れば君臨できると信じてる弱い人で、人の見てないところでは極端に道徳心が無くなる。子供の頃すでに僕に見下されてはいたんですが、それでも怖かったから従うしかなかった。母は何にでも極端に怯えるようになり、「直接暴力のない支配」がウチの家族なんですよ。あの温泉は、子供が家を出て行き、ふいに感じた寂しさが作った幼稚な甘えと悪ふざけですよ。」

また死。

あの温泉は、誰も入りたがらないと聞いていたんですが・・・。

「ま、外から丸見えだから良識のある人は入ろうとは思わないでしょうね。でも中には温泉マニアみたいのが入りにくるけど、最近は断っているからねえ。本業が滞るようになってしまって、知人かよっぽどのお得意様くらいじゃないともう入れないんじゃない・・・初対面で入れるのは芸能人くらいじゃない。インリンとか撮影に来ないかな・・・。」

・・・インリン。

「その入りたがらないってウワサはアレじゃない?芸能人が取材にくるけど、ことごとく入りたがらないんだよね。予定では入るって言ってたんだけど、実際に入っていった人はいないんじゃないかな。」

それって、何か丸出し以外に理由があるんでしょうか?

「実際に温泉見た?雪で溜められないけど触ってみたら。」

温泉コラムを書きながらも、今回が初めての温泉となる。
現在浴槽は封印されているが、雪を溶かすために管を通して商店の目の前の敷地に、温泉が垂れ流されている。
手を伸ばして温泉に触ってみた。

・・・なるほど。これでは芸能人が入りたがらないわけだ。

「一年中その調子なんです。温泉の取材は事前に調べたりしないからね。それでみんな入るのを拒否するんだ。」


                 つづく。

text by 神野槌火児 | 2005.03.08 | [ 誰も入りたがらない伝説の秘湯 ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.02.22

第4回:白糸を辿り、火車と討ちあう・・・の巻き。

誰も入りたがらない伝説の秘湯 by 神野槌火児

東京から発信されるテレビからは、芸能人たちがこぞって春を強調している。
しかし、それは関東ローカルの話。
北国は雪に覆われ、暖冬の予測をあっさり裏切り、危険を感じるほどに降り積もっている。

何が危険って、車間距離あけろよ、トラック!
ルール守れ、こんな時くらい!
一部の社会適正のない人のせいで厭な気分になりつつも再び鳴子温泉へ向かう。

今回は第三回で出会った男性から、あの風呂に入った事がある人を紹介してもらう事が出来た。
いったい今までの苦労は何だったのか?
とにかく彼をインタビューする事で、ぼんやりした秘湯の謎がいくつか明かされる・・・はずだ。

kurumayu


指定された場所に向かうと、20代半ばくらいの男性が待っていてくれた。今日は休みなのだろう、顔には無精髭を生やし着の身着のまま来てもらったようだ。こんなコラムのために何かすいませんと挨拶しつつ本題に入ることにする。本名NGということで仮にMさんと表記する許可を頂いた。


私「よろしくお願いします。いきなりですけど、どうしてあの温泉に入ったんですか?」

M「あそこの息子さんと同級生なんです。前に遊びに行った時に入れてもらったんです。」

私「それっていつ頃なんですか?」

M「去年とか一昨年の夏だったと思います。」

私「あの、道路から丸見えですけど恥ずかしくなかったですか?」

M「いやあ、入ったのが夜中だったがら平気でした。」

私「昼間入っている人もいるんですか?」

M「・・・さあ?」

私「どんな感じの温泉でした?」

M「どんな感じ・・・うーん。いっつも共同浴場(の温泉)入ってるから、特別温泉自体に感じることはなかったですけど・・・目の前が公道だから変な開放感があるんです。星見ながら入ってると、何か砂漠に浴槽置いて入ってるみたいな感覚になりました。どうも野良猫の通り道になってるらしく、夜中に視線感じると野良猫が不思議そうにこっち見ててねぇ・・・都会じゃでぎねぇ経験です。

私「それは奇妙な経験でしたねぇ。ところであの温泉は鳴子町でもあまり知られてないのでしょうか?」

M「そんなことはないと思いますよ。」

私(?・・・第一回目で外堀を埋めるように調べたはずなのに、いっさい情報が出なかったのだが・・・。)

M「テレビで何回か放送されてるし、(下町系芸能人N)も入りに来たそうです。田舎だから滅多にテレビ来ねえし、地元が映ると町中で見てます。それに道路から丸見えで目立ってるから地元じゃ結構有名ですよ。」

私「あのう・・・(温泉を調べたことを説明し)・・・実は町中であの温泉の存在を隠してたりして?」

M「そんな事ないでしょう。もしそうだったらテレビには出ないんじゃないですか?」

私(それもそうだ。きっと調べ方が悪かったのだろう・・・。)

M「もっと詳しく聞きたいなら、(温泉のある)家の人に聞いたらいいんじゃないですか。」

私「そうですね、ありがとうございました。」


Mさんの休日の予定を気にしつつ早めにインタビューを終えた。おやおや今回は調子が良い。予定通りに事が進むのは気持ちが良い。

次回はこの温泉を作った人物に会い、話を聞くことになっている。これはだいぶ前から決まっていた事でアポも完璧だ。あいさつも兼ねて温泉のある家を訪ねるとMさんを紹介してくれた男性が迎えてくれた。
お礼を言って次回のインタビューの話を切り出すと以外な答えが返ってきた。

「それが無理です。」

・・・えっ?

「父(温泉をつくった人物)は脳梗塞で入院です。」

・・・・・・。
 
 
 
 
tytyb 
 
「・・・・・・でも、つづきます。」
 
 
 
 
 
 

text by 神野槌火児 | 2005.02.22 | [ 誰も入りたがらない伝説の秘湯 ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.02.08

第3回:冥府に迷い、姑獲鳥と啼く・・・の巻き

誰も入りたがらない伝説の秘湯 by 神野槌火児

   前回の反省

東北の冬は寒い。そして夜は暗い。

前回は秘湯を見つけ、さらに利用者にインタビューを試みるために鳴子町内に潜入。見つかり難い事と朝風呂に入る人もいるのでは・・・という事を想定して、かなり早い時間に家を出た。しかし、友人の証言が正確だった為にあっさり見つかる秘湯。見せてもらったビデオでは「毎日入っています」とはっきり言っていたのだが、昨日今日で封印されたようには思えないビニールシート・・・。雪のせいか、それとも永遠の封印なのだろうか。時計を見ればオールナイトニッポンが終わりかけている。こんな時間にどうしよう・・・。

曹操曰く、どのような吉日にもトラブルは起こる。

機転を利かせ、仕方ないので今回はなし崩し的に深夜の鳴子温泉ナイトスポットを紹介する事に決めた。
・・・たぶん何もないけど。

ナイトスポットと言えば、カストリ酒や赤線地帯などを想像してしまう人もいるだろう。しかし、それは都市部のみの悦楽。田舎には別の楽しみ方がある。

鳴子町も夜の8時になれば町を歩く人の影も少ない。11時くらいに道の向こうから人が歩いてくると、『こんな時間に何してる人だろう、怪しい』とお互いに勘繰ってしまう。すれ違う時には目こそ合わせていないが意識し合い、異様な緊張感がはしる。しかし大抵の場合は町民同士の無駄な警戒心に終わる。

現在は、まさに夜と朝の間。町民も観光客も寝静まっている時間で、カメラを持って歩いている私は完全なる不審者で通報されかねない。別に悪いことしてるわけじゃないんだから、という気持ちとは裏腹にどんどん民家の無い方に歩いていく私。

そのうち弁天とよばれるエリアに入っていた。このあたりの川(沼?)には白鳥が飛来し、今もその辺にいると推測できる。何となく白鳥の寝姿が想像できなかったので、この機会に奴らの寝姿でも覗いてみようと思い立ち、ナイトサファリと決め込んでみた。

白鳥はどんな風に寝ているのだろう。陸に上がってだと野性動物に狙われるし、水上に浮いて・・・だと、この川では流されてしまうのでは。木の上だと気持ち悪いし、全く分らない。ビジュアルとしての白鳥は有名だけど生態は知らない事が多い。第一、「犬好き」や「猫好き」はよくいるが「白鳥好き」は聞いたことない。さらに声を出して読むと「白鳥突き」に聞こえ、何かの技のようだ。

くだらない事を考えながら川原に下りて行く途中、何かを積んだ廃バスが木々の間に埋もれている。中に誰か乗っていたら怖いなと考えると、闇と同化した窓の奥にいるような気がしてくる。映画「女優霊」でも、バスの中に心霊が見えるんだよなあ・・・・・・・・・。

町民の間では白鳥の餌づけで知られている川原に到着。すると私の気配を感じた何かが水面に音を立てて遠ざかっていく。何?水鳥ならもっと静かだろうし、飛んで行った場合は見えるはずだ。獣なら川の奥に向かって逃げるだろうか・・・。河童か?

白鳥を探すも目視できず、黒い水に映る向こう岸の明かりをしばらく見ていた。その時、女性の吐くような声と息苦しそうな赤子の声が続いて聞こえた。私も驚き「nap!」と奇妙な声を出した。声のするほうには枯れ木のシルエットが見え、いかにもな女性が最期を無理矢理迎えているのではと、瞬時に頭に浮かんだ。今度は姑獲鳥(ウブメ)と川赤子か!?(どちらも妖怪)

ubume 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               うろ覚えのウブメ→


                                                                                           
                                                
                                                  
                                                 
                                                
                                           
                                                         


でも冷静に考えれば鳥の声だったのだろう。この闇と、都会で感じるものとは違う孤独感が幻を見せてくれたのだ。きっと江戸時代とかの妖怪には、こういった現象を体験した人の想像による解釈から生み出されたモノもいるのだろう。そう思うと、これも妖怪体験であり得した気分になる。こんな水木しげる体験が出来るのも田舎の温泉ならではだ。

結局、ナイトサファリも鳴き声しか聞こえず。携帯していたあんぱんを千切って投げてみたが白鳥は現れない。思っていたほど卑しくはないようだ。

諦めて帰ろうと振り返ると、土手の上を杖ついて歩く老人(性別不明)が影になって見える。今度は明らかに実在している人間のようだが、こんな時間に歩くなよ老人!どこに行くのか分らないが、ご家族の方に車で送ってもらえよ・・・と心の中でつっこんだ。小心者の私は影の中に姿を隠し、ゆっくりと歩く魔法使いが居なくなるのを待った。奴もワシの「いとしいしと」を狙っているのか、ごくりごくり。

指輪を弄くりながら時が過ぎるのを待っていると、奥羽山脈の峰から吹き降ろされる狂風が轟々と唸り出した。その音に恐怖を感じ、のそのそと立ち上がると使命を思い出して鳴子温泉のメインストリートに戻った。自分の履いているトレッキングシューズが凍った路面にはむいていない事を実感しつつ鳴子温泉駅に着いた。

・・・でも、何にもない

結論を言えば、深夜の温泉街で一番の楽しみは睡眠であると断言できよう。間違っても深夜の川原には近づかないほうが良い。いろんな意味で怖い目に遭う危険があるので、大人しく寝れ。

朝の7時になった。町は動き出し、コンビニに居るのも申し訳ないので再び秘湯のある場所へ戻る事にした。もしかしたら稼動し始めているかも知れないという淡い期待もある。しかし、そんな幸運もないだろうと諦めていたのだが!私は昨夜と同じ場所に戻って驚愕した。

うわあ!昨日とおんなじだあ・・・!

何にも変わっていない。封印されたままの風呂桶。
偶然に民家から若い男性が出て来たので、この温泉について聞いてみた。

あのう、これ温泉なんですか?

「そうですよ。」

入れるんでしょうか?

「やめといた方が良いですよ。」

・・・やめといた方が良い?まさか、この温泉は入るものじゃないのか!?

                        
                                     

samurai
・・・・・・

                                                
                                     
                                   
                                        

text by 神野槌火児 | 2005.02.08 | [ 誰も入りたがらない伝説の秘湯 ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.01.25

第2回:命数は崩れ、吉日に凶ありの巻き。

誰も入りたがらない伝説の秘湯 by 神野槌火児

   前回のあらすじ

私の名前は神野槌火児(じんのつちひこ)。そこそこ売れっ子の占い師だ。

友人の戯言を本気にし、コラムを書く為に宮城県の鳴子町にある秘湯を探してみるのだが、誰も知らない知られちゃいけない?秘湯の情報はまったく見つからない。

このまま見つかりませんでしたというオチでコラムを終了する事も考えたが、優しい@niftyのスタッフが豹変する様を想像すると怖いので、仕方なく秘湯を探し続ける。

何とか知ってそうな親父に遭遇するも今度は、その温泉親父が豹変。

一回五千円のコラムにしては気苦労が多い。かつて出演していたディ○ニーラ○ドの夜パレードとほぼ同額の料金だが、あの頃の気楽さはない・・・。

新世紀になってから良い事なし、私の2000年問題はまだ終わらない。
温泉親父の小言もまだ始まったばかりだ・・・。

 
「だいたい秘湯って何だ?見つけてどうするつもりだ?」

入ります・・・という私の答えを温泉親父は想定していたらしくエンジンをかけて喋り始めた。

「料金を払って入浴できる温泉なら、いくらでも入れば良い。でも商売にしている以上、それは秘湯とは言えないでしょ。アンタの言う秘湯が人気のない山奥にある猿やゴリラ(たぶん熊の事)が入りにくるような温泉を言うなら、それは勝手に入るべきではないのよ。誰もいないような土地だって、それぞれ所有者がいて、そこにある温泉には所有権があるんだから。勝手に入るのはダメでしょ。」

なるほど・・・。

「前に、家の土地から勝手に化石を掘っていった大学の教授がいたが、お蔭で地盤が崩れやすくなって、こっちは迷惑を被ったんだから。」

ん?温泉の話じゃなくなった・・・。その後、親父の所有する崖のような土地が化石発掘後に雨で削られて年々減っていく話が続いた。個人的には面白い話だが、あくまでnifty温泉のコラムなので割愛。

「ところで、どんな雑誌に載るんだ?」

雑誌じゃねえよう。出会い頭に説明したはずだが、再びnifty温泉の説明をする。もう一度温泉の話に戻すチャンスなので、今度は難しい単語である「インターネット」という言葉を使わずに、パソコンしている人しか見られない文章で、温泉に関する口コミ情報などが載っていると説明する・・・のだが!

口コミなんてねえ、文章にした時点で口コミじゃないんだよ。

否定されるnifty温泉とインターネットというシステム。気持ちは分るが、今回はnifty側に立って取材をしてるためフォローをしようとする。しかし「でも・・・」というセリフしか喋らせてもらえず、親父の主張は止まらない。彼の苦悩は最早、日常となってしまった近所の温泉だけでは癒せない。現実逃避の癒しよりも、変革こそが彼を救うことができるのだろう・・・と感じる。

「だいたい、あんた達マスコミは物事を過剰に書きすぎる。それを見た人たちが写真と違うとか、期間限定のサービスをずっとやってると勘違いして、旅館にクレームを出したりして迷惑だ。」

いつしかマスコミの代表にされてしまった私。親父の言うクレーム例は極端なものだが、喧騒に慣れていない田舎の人は全てにおいて重く受け止めてしまう。たとえ間違ったクレームでも簡単にトラウマになってしまうのだ。

ここで都市部から田舎に旅行する方に気をつけてほしいのだが、クレームがあり、それがいかに正論であっても大声を出してはいけない。都会と田舎では人と人の距離が違う。まずは丁寧にクレーム内容を認識させて、訂正できることは訂正してもらうのが正しいネゴシエイトと云うものだ。相手を怯えさせるだけでは何も改善しない。

その後も続く親父の苦悩を、私は自分の意見を言わずにただ相槌のみで乗り切る。文章にすると激昂しているようにも読めるが、親父の口調は一貫して哀しい。しだいに親父も言いたい事がなくなり、もしくは疲れて静かになってきた。モハメド・アリのロープ・ア・ドープ戦法よろしく、ここで親父に礼を言って会話に止めを刺す。

結局、秘湯に関する情報は得られずに今回のミッションは終了した。

ここで何故、私は秘湯に関する情報を知り得たのかを記さねばなるまい。私の友人が鳴子町を車で徘徊していたところ、信号待ちで止まっていると民家と民家の間に『入浴中』という看板を発見した。よく見れば簾の中に人影を感じたと言う。そのような国道(県道?)から丸見えの場所に温泉が存在するのかと疑問もあったが、テレビでやっていたという知人の言葉もあり今回の探索に至った。

もはや自分の足で探した方が良さそうだ。仙台市内にすら大雪が降る日、なぜか雨降る山岳部の鳴子町に向かった。あそこまで情報のない、まさに秘湯!そう簡単に見つからないだろう・・・とも思っていたが、友人の覚えていた信号のある交差点にたどり着くと、あっさりとそれっぽいものが・・・。

yamiaka友人の言っていた看板は見当たらないが、たしかに民家の庭らしき所に木組みがあり浴槽らしきモノが・・・。分り辛い写真で申し訳ないが、写真中央部にそれがある。それにしても赤い写真。これが心霊写真だったら警戒色を発していると言っても良い。

コラム第二回の目的は、この温泉の利用者にインタビューをして秘湯の全容を解明する事にある。利用者がやってくるまで張り込むために、必須アイテムのあんぱんと牛乳を持参。もちろんカイロも忘れてはいない。太陽にほえろのBGMを聞きながら、まずは温泉の確認だ。


fuuinn                                                                     


・・・あれ、封印されてない?


               
               

どうしよう・・・これ、誰も来ないんじゃねぇかなぁ・・・。


tytyb                                        「つづく、けど・・・大丈夫?

                                                                                                                                                                                                               

text by 神野槌火児 | 2005.01.25 | [ 誰も入りたがらない伝説の秘湯 ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (1)

2005.01.11

第1回:神野北上し苦難に遭うの巻

誰も入りたがらない伝説の秘湯 by 神野槌火児

このコラムを書く為に実家が所有する離れ家に隠遁してみる。道中に頼もしい天気予報のお蔭で、想定していなかった大雪に見舞われ初スリップを経験するが、何とか生きて辿り着いた。何年も眠らされていた廃墟に近い平屋、むき出しの雛人形が寝室に飾ってあり、お内裏様とお雛様が描かれた掛け軸がぼんやりと浮いて見える。ここで何日も過ごすのか・・・と軽い失敗感に襲われながら、このコラムはスタートする。

 宮城県にある鳴子温泉。複数の源泉が集中することから、一部マニアの間では『温泉マトリクス』と呼ばれている。この異界とも呼べる温泉郷には奇妙なウワサが存在していた。何度もテレビで紹介されたにも関わらず、誰も入りに来ない温泉があるという。

今回は、その温泉を見つけ出して謎を解いていく。
果たして見つけることが出来るのだろうか。

ちなみに先程、厠に行くと凍結して水が流せない状態になっていた。
果たして便意はどう処理したら良いのだろうか・・・。

ミッション1:ネットで検索してみる。

なぜ誰も入らないのかという疑問に答える仮定として、余りに「秘」過ぎて誰も見つけられないんじゃないかと思う。そこで最初は文明の利器インターネットを使い、情報がどの程度出ているのか確認してみる。
これでハッキリと見つかってしまえば、秘湯見つかるということで今回のコラムはおしまいだ。余った行数はド○クエ2のふっかつのじゅもんで埋めて誤魔化すつもりである。

まずは「鳴子・温泉」で検索。1万件以上ヒットした。ここから絞り込んでいく。
「秘湯」を加えて検索すると、まだ1000件以上ある。全部見るのは不可能だ。その後も「変わった」「奇妙」「謎」など思いつく単語で検索したが、むしろ温泉に関係ないヒットの方が多くなる始末。自分が検索下手なことを実感しつつも何とか情報のあるサイトを見てみたくなり、私が知っている秘湯に関する重要な単語(個人的内容なので秘密)を加えて検索する。

ヒットなし。

けっきょく目的の秘湯に関する情報は得られなかった。無限に溢れる情報の袋小路に迷い込み、いつしか面倒になってきたのでネット検索を諦める。しかしこれほど情報が少ないとは、名ばかりの秘湯ではいということだろうか。

ミッション2:電話で聞いてみる。 

宮城県の観光に詳しい女性を紹介された。宮城観光のプロならば少なからずも情報を知っているかもしれないので、さっそく電話を入れてみた。電話に出た女性は新年早々にも関わらず丁寧に応対してくれた。年末はゆっくり出来たのだろう。

「宮城県に秘湯と呼ばれているような温泉ってありますか?」
「秘湯・・・ですか?」

少し考えてから女性は答えてくれた。
「滝つぼがそのまま温泉になっている所があります。」

聞けば温泉が滝から落ちて、川の中に入浴するというなかなかインパクトのある秘湯だ。だが、それは入ってみたい。今回の目的と違うだろう。そこで他に変わってる秘湯はないか、と問うと「ない」ということだった。感じの良い応対に安心しながらも電話を切る。

ここまで来たら何としても見つけなければなるまい。そこで範囲をさらに狭くして鳴子町の役場に電話してみた。

「あのう、温泉について少し聞きたいのですが・・・」
「!」

奇妙な間があった。触れてはいけないことだったのだろうか。秘湯といえば通のみが知る安らぎの場所というイメージを勝手に持っていたが、理由があって隠しているケースも考えられる。何か怖ろしい事件にこのまま巻き込まれていくのだろうか!?


tukare「・・・・・・源泉のことですか?」
「いえ。」


                            


                      

                          
そういえば大変でしたね。昨年は何本もこういった電話がかかってきたのであろう。ほんの数秒で受付女性の苦労が嫌というほど伝わってきた。今度ショットバーで会ったら一杯おごってあげようと心に決める。
何だか寂しげな気分になってきたので、お礼を言って電話を切る。


それでも何とか鳴子町に詳しい人物が見つかったので、話を聞いてみる。この時点で普通の人には見つけられない人物だ。仮定の「秘」過ぎて見つからないというのは合っているのではないか、と思い始める。
私は情報をある程度知っているのだが、何としても他人から話を聞いてみたい。
多少、本末転倒気味ではあるが仕方がない。

「鳴子町に・・・秘湯と呼ばれる温泉はあるのでしょうか?」
「滝つぼが・・・」

アレだ!さっき聞いたヤツだ。鳴子だったのか、この際そっちの秘湯に切り替えてコラムを書き換えていこうかと真剣に悩む。今回探してる秘湯は、滝と川が温泉というインパクトに勝てるのだろうか?取り敢えず滝温泉に入ってから判断することにしようか。

「冬は入れません。」

露天にあるため、雪などで温度が下がり冬はやっていないそうだ。仕方がないので本題だった秘湯の情報を入れるしかない。

「他にありますか?」
「ないです。」

 ・・・なかった。

これで終わったかと思った時に、その男性は逆に尋ねてきた。

「だいたい秘湯って、何を持って秘湯なんだ?」

ちょっと変わった隠れ家的な温泉を語呂が良いので秘湯と呼んでます・・・とも言えずにいると。

「そんなモノを文章にするとロクでもない事が起こる。」

男性は怒っているとも悲しんでいるとも分らない声で、静かにそう言った。
何だろう・・・「トリック」みたいな展開になっていくんじゃないだろうな、と構えてみた。

でも、この後に語られた男性の言葉は・・・日本人の温泉ファンにとって辛辣な言葉だった。

                                                                                                                                          


tytyb                                 「・・・・・・つづく

                                         

text by 神野槌火児 | 2005.01.11 | [ 誰も入りたがらない伝説の秘湯 ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (1)